弁護士ブログ

2015.05.26更新

損害賠償額の算定における基準は一つではないの?

 

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

交通事故における損害賠償金の法的根拠は,民法の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条,同第710条)にあります。

 

もっとも,法律には,「損害賠償を請求できる」ということが規定されているだけで,「実際にその金額をいくらにするのか」ということについては規定されていません。


一口に「不法行為」といっても,その内容は事案ごとに異なります。

交通事故に限ってみたとしても,すべてがまったく同じ事故はないのですから,やはりその内容は事案ごとに異なるといわざるを得ません。

 

したがって,法律で画一的に損害賠償の金額を定めてしまうということは現実的ではありません。
とはいうものの,まったく何も基準がないということも問題です。特に裁判の場合には,類似の事案であるにもかかわらず,裁判官が変われば判断基準も異なり損害賠償金額も大きく変わってしまうというのでは,法的安定性を害しますし,公平な裁判を実現できません。

 

そのため,交通事故による損害賠償額の算定については,実務上三つの基準が存在しています。
具体的には,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の支払基準(自賠責基準),任意保険会社の支払基準(保険会社基準),裁判基準(弁護士基準)があります。

 

 

1 自賠責保険の支払基準(自賠責基準)


自賠責保険は,国庫負担により,被害者の最低限度の損害填補を図ろうという公的制度です。
あくまで最低限度の補償ですから,損害のすべてが賄われるわけではありませんが,加害者の支払能力にかかわらず一定額の補償を受けられるという被害者保護において最も重大な制度といえます。

 

この自賠責保険における損害賠償額(または保険金額)については,法令によって一定の支払金額・支払基準が設けられています。そして,自賠責損害調査事務所によって損害額が査定されることになります。

 

自賠責保険による損害賠償額は,上記のとおり最低限度の補償です。

したがって,自賠責保険だけでは損害を填補しきれないという場合もあるでしょう。
その場合には,それを超える部分を加害者(または加害者側の加入している任意保険会社)に請求することとなります。

 

 

2 任意保険の支払基準(保険会社基準)


加害者が任意保険会社の自動車保険に加入している場合,被害者は,その加害者側任意保険会社から損害賠償金の支払を受けることができます。


任意保険会社に対しては,自賠責保険の支払基準を超える金額を請求することが可能ですが,弁護士介入前の交渉段階では,損害の全部を填補するだけの金額を支払おうとはしません。


それはなぜかといえば,各任意保険会社には,それぞれ各社ごとに内部的な支払基準があるからです。

弁護士介入前の交渉段階では,この各社ごとの支払基準を超える支払をしてくれないのが通常です。


かつては,各社に統一的な任意保険会社の支払基準がありましたが,現在では保険の自由化によって,各社ごとに支払基準が異なります(対応もまちまちです。ただし,大きな違いがあるというわけでもありません。)。

 

任意保険会社の支払基準は,もちろん自賠責保険の支払基準よりも高額となりますが,後記の裁判基準に比べると少額です。損害額によっては,大幅に少額となってしまう提示をされることもありますので,注意が必要です。

 

 

3 裁判基準(弁護士基準)


裁判所が,訴訟における基準を設けていたとして,それを公開するということはありません。

裁判例の積み重ねをみるほかないです。

ただし,実務上,裁判所においても利用されている基準があります。それが「弁護士基準」と呼ばれる基準です。

 

「弁護士基準」というのは,具体的にいいますと,日弁連交通事故相談センター東京支部による「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」といいます。)という書籍に掲載されている基準のことをいいます。

この赤い本の基準は,任意保険会社の支払基準よりも高額となります。金額的にいえば最も高額となる可能性があるのが,この基準なのです。
そして,弁護士に依頼していただければ,任意保険会社との示談交渉は,上記の弁護士基準で損害額を算定し,交渉に臨みます。

 

 

4 まとめ


実際の事故において,任意保険会社が提案する金額は,「保険会社基準」にしたがったものであり,「裁判基準」よりもはるかに低いケースがほとんどです。

しかも任意保険会社の言い値を鵜呑みにして受諾してしまう方が非常に多いのです。
それではもったいない。

 

上記の「三つの基準」を知っているかどうかで損害額が変わってしまうことはおかしいと思いませんか。
弁護士が介入し,裁判基準による適切な賠償額を獲得できるようサポートさせていただく意味がそこにあります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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