弁護士ブログ

2015.08.17更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 昨日(8月16日)午後9時35分ころ,東京都豊島区東池袋のJR池袋駅近くで,暴走した乗用車が歩道に乗り上げ,店舗に突っ込み,歩行中の25~71歳の男女5人がはねられたとの衝撃的なニュースが報道されました。このうち板橋区成増在住の薬剤師の41歳の女性が頭を強く打ち,搬送先の病院で17日未明に死亡が確認されたとのことでした。また,4人が骨盤骨折などの重軽傷を負ったそうです。

 警視庁池袋警察署は,車を運転していた53歳の医師を自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の被疑事実で現行犯逮捕しました。今後は,過失運転致死傷被疑事件に切り替えて調べを進めるそうです。

 

 昔から刑法をご存じの方からすると,「過失運転致死傷罪って何?」,「業務上過失致死傷罪が成立するのではないのか?」などといった声が聞こえてきそうです。

 そこで,今回は,過失運転致死傷罪について,解説します。

 

1 従来の人身事故の取扱い

 

 自動車を運転中に注意を怠って,人を死傷させるという類型は,当初は刑法の業務上過失致死傷罪で処理されていました。その後,平成19年に刑法が改正され,過失犯の特別類型として,自動車運転過失致死傷罪が設けられました。

 

 

2 業務上過失致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪の違いとは?

 

 業務上過失致死傷罪と自動車運転過失致死傷罪との違いは,法定刑の重さでした。

 すなわち,業務上過失致死傷罪の法定刑は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金であるのに対し,自動車運転過失致死傷罪は7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金とされており,自動車運転過失致死傷罪の方がより重い法定刑とされていたのです。

 

 

3 自動車運転処罰法とは?

 

 平成26年に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」,通称自動車運転処罰法という法律が施行されました。この法律により,自動車を運転して人を死傷させた行為について,独立の罰条が定められました。それに伴い,刑法からは,自動車運転過失致死傷罪の条文が削除されました。

 そのため,現在では,自動車を運転する上で必要な注意を怠って,人を死傷させる行為は,刑法ではなく,自動車運転処罰法によって処理されることとなったのです。

 この法律の下における過失運転致死傷罪の法定刑は,平成19年の刑法改正と同じく,7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金とされています。

 

 

4 過失運転致死傷罪を犯した場合の逮捕・勾留の可能性

 

 上記事件では,被疑者が現行犯逮捕されました。今後,被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあり,なおかつ勾留の必要性がある場合には,勾留されることはあり得ます。

 ただ,被疑者が医師であること,薬物やアルコールによる影響ではないということですから,勾留されずに在宅で捜査されることもあります。その時は,捜査機関から呼び出されるのに応じて出頭することとなります。過失運転致死罪になったとしても,当職が受任した事案は,在宅の被疑者の方が多いです。

 そして,捜査が終結した時は,検察官により起訴するかどうかの判断がなされることとなります。本件は一人が亡くなられているばかりか,被害者も複数なため,公判請求は免れないかもしれません。起訴されるときは,在宅のまま起訴されるでしょう。

 

 

5 過失運転致死傷罪の処分

 

 過失運転致死傷罪で起訴されても,略式起訴により罰金を命じる略式命令(略式裁判)が下され,その罰金を納めるだけで済むことがあります。その場合は,法廷で裁判を受ける必要はありません。

 過失運転致死傷罪の罰金の相場があるのかという疑問があるかもしれませんが,過去の事案をみますと,示談の成否や生じた怪我の程度,また自動車の種類などが,罰金額の目安となっています。具体的には,生じた怪我が数週間程度であり,また示談もできていれば,罰金額は30万円~40万円前後となっています。他方,怪我が1か月を超えていたり,大型ないし貨物自動車での事故であったりしますと,罰金額は50万円以上となる傾向があります。

 ちなみに,過失運転致死傷罪には反則金の制度はありません。そのため,道路交通法違反事件と異なり,反則金を払って起訴を免れるということができないのです。

 

 それでは,公判請求された場合,過失運転致死傷罪の量刑相場はどのようなものとなるのでしょうか。

 

 ① 過失運転致死傷罪のみで起訴された場合

 過去の事案によれば,飲酒運転やスピード違反などの道路交通法違反がなく,過失運転致傷死罪のみで起訴されている場合は,懲役刑ではなく,禁錮刑が選択される場合が多いです。初犯であれば執行猶予付きの判決となることが多いです。

 

 ② 道路交通法違反の罪も加わる場合

 過失運転致傷だけでなく,飲酒運転やスピード違反などの道路交通法違反も併せて起訴されている場合には,禁錮刑ではなく懲役刑が科されています。初犯であれば執行猶予付きの判決となることが多いです。

 

 

6 過失運転致死傷罪の被害者対応

 

 過失運転致死傷罪を犯した場合,被害者への対応はどのようにすべきでしょうかとのご質問をいただくことがあります。 

 まず,被害者のお見舞いに行くべきかという点ですが,一般論としては,被害者側に拒まれない限り(上記事件のように亡くなられたケースでは,なかなか謝罪を拒まれる場合も多いです。その場合は無理をしなくてもよいと思います。),お見舞いを重ねるのがよいとされます。そして,然るべきタイミングを見計らって損害賠償や示談金の支払を申し出ることが多いです。

 被害者に支払う損害賠償金ですが,加害者側である被疑者か被害者かのどちらかが保険に加入されている場合には,損害賠償金は保険金から支払われます。ただし,保険会社から損害賠償が支払われている場合でも,慰謝料の意味を込めてお見舞金という形で示談金を支払うこともあります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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