弁護士ブログ

2015.07.01更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

昨日(平成27年6月30日),神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線下り「のぞみ225号」(16両編成)の車内で火災が発生したとのニュース報道がありました。乗客の男性が車内で油のような液体をかぶり,火を点けたといいます。その男性は焼身自殺を図ったのではないかとみられています。

 

ニュース報道によりますと,油のような液体をかぶって火を点けたとみられる71歳の男性は死亡し,また,乗客の50代女性も煙を吸って死亡されたようです。そのほかに,乗客ら26人も煙を吸うなどして重軽傷を負い,うち7人が入院されたようです。

新幹線の車内で火災が起きるのは初めてのことであり,新幹線内で起きた事件・事故で最悪の被害となったといわれています。

 

神奈川県警察は,男性が焼身自殺を図ったとみて,殺人と現住建造物等放火の疑いで捜査していることが報じられています。

そこで,本件のように周囲の人間を巻き込むような自殺は犯罪とならないのでしょうかとの疑問をもたれた方もおられると思います。以下,その疑問にお答えいたします。

 

 

1 自殺行為自体は犯罪ではない

 

まず,日本の刑法では自殺に関与した者を処罰する規定はありますが(刑法第202条前段),自殺すること自体を処罰する規定はありません。すなわち,自殺すること自体は,犯罪ではないのです。

 

2 本件は,放火の罪,傷害の罪,場合によっては殺人の罪に該当する可能性はある

 

ただし,本件は走行中の新幹線の車内という密室で火災を発生させた形で自殺をしたのですから,現在建造物等(放火の客体である「等」には汽車,電車,艦船又は鉱坑が列挙されています。)放火罪(刑法第108条)に該当する可能性があります(刑法第108条の罪は,人が現在する電車を焼損した場合にも成立するのです。)。

 

新幹線車両のような人が現に存在する密室で,揮発性の高い液体をかぶって火を点ければ,車両に燃え移ることは容易に想定できます。

男性がまいたとされている「油のような液体」が揮発性の高いガソリンなどであった場合,少なくとも車両に燃え移っても構わないと考えていた(この状態を「認容」といいます。),すなわち,放火の未必の故意があったと考えられます。

 

また,火災を引き起こす行為によって,人を負傷させたり,他の乗客が死亡させたりしたという点については,少なくとも,傷害罪や傷害致死罪に該当する可能性があります。

 

場合によっては,周囲を巻き込んで煙や火で死者が出ても構わないと認識していた,すなわち未必の殺意があったとして,殺人罪に該当する可能性もあると思います。

 

 

3 被疑者が死亡してしまった場合の手続

 

このように被疑者の行為は,犯罪行為に該当し得るのですが,死者に刑事罰を科すことはできません。よって,被疑者が死亡している場合,検察官としては,不起訴処分とせざるを得ません。被疑者が死亡したときは,適法に刑事裁判をする条件(これを訴訟条件といいます。)を欠くこととなるからです(刑事訴訟法第339条第4号参照)。

具体的には,検察官が「被疑者死亡」の主文で不起訴裁定書という文書を作成し,不起訴処分とします。

 

 

4 被疑者の遺族の民事責任

 

ただし,被疑者の遺産(遺産には,プラスの財産とマイナスの財産を含むからです。)を相続した遺族が,被害者らに対し,民事上の損害賠償責任を負う可能性はあると思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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