弁護士ブログ

2015.06.11更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

1 児童手当の支給方法

 

突然ですが,児童手当はだれのものでしょうか。

児童手当の趣旨・目的からいえば,それは「子どものもの」といえます。ただ,子どもがお金を受け取ることはできない(行為能力が制限されているため,お金を管理する能力がないわけです。)ため,便宜上,法定代理人親権者が児童手当を受け取っているのです。

このように,児童手当は,子どもを実際に養育している親が受け取って,子どものために使うのが本来の姿です。

 

しかし,「別居して私(妻)が子どもを育てているのに,夫が児童手当を受給したまま私(妻)に渡さないのですが,どうすればよいのでしょうか。」という相談をよく受けます。

このような事態が生じるのは,実際の実務の運用がつぎのようになっているからです。

 

両親が離婚または離婚協議中のために別居していて,生計を同じくしていないときは,児童と同居している人に手当が支給されます。

単身赴任などで別居している場合は,生計を維持する程度の高い人に支給されます。
 

(厚生労働省発行の「児童手当Q&A」参照)

 

児童手当は原則として児童を養育している人が複数いる場合は(通常は父母)「生計を維持する程度が高い人」に支給されています。

「生計を維持する程度が高い人」とは一般的には父母のうち所得の高い人を指します。

 

しかし,別居中の両親が生計を同じくしていないような場合(離婚又は離婚協議中について別居している場合)については,同居している人が児童を養育していると考えられることから,児童と同居している人に支給されます。

 

 

 

2 児童と同居している人が支給を受けるための手続

 

児童と同居している人が支給を受けるための手続は,以下のとおりです。

 

 ①まず,「児童手当・特例給付受給事由消滅届」を提出します。

これは,父母が別居(住民票上)又は世帯分離している場合には,提出不要です。父親のほうが受け取っている場合,父親がまずこれを書かないといけませんのでご注意ください。

 

② その後母親名義で「児童手当・特例給付認定請求書」を提出します。

母親一人でも「児童手当・特例給付受給事由消滅届」も合わせて提出できるかどうかは,お住まいの市区町村で確認してみてください。

 

なお,離婚調停中の場合でも変更の申立ては,「児童手当等の受給資格に係る申立書」と決められた書類を出すことで,所定の条件を満たせば変更できるようですので,お住まいの市区町村役場等で問い合わせてみてください。

 

 

 

3 児童手当相当額の引渡しの可否

 

このように,児童手当を確実に受給するためには,受給者を変更してもらうという方法があります。しかし,そのためには,もともと受給していた配偶者が変更手続について協力しなければなりません。離婚前提で別居しているようなご夫婦の場合,感情の問題もありますから,そう簡単にはいかないでしょう。

 

そうすると,端的に,上記妻が上記夫に対して児童手当を渡せといえないのか,という疑問が生じます。

 

この点につき,たしかに,児童手当の支給を受けた親は,それを児童手当の趣旨・目的にしたがって使用する義務を負うことは間違いないでしょう。

しかし,上記義務は法律上のものではなく,あくまでも事実上のものにすぎませんから,子を監護している親が,当然に,児童手当相当額の引渡しを他方配偶者に求めることができるわけではありません。

したがって,子どもを監護している親は,児童手当を受給した他方の親に対して児童手当を渡すよう強制することはできない,というべきでしょう(私見)。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.06.08更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

当職ら(妻を含む。)は,毎週日曜日午前10時からフジテレビ系列で放送中の「ワイドナショー」を楽しみにしています。とくに,ゲストコメンテイターが長嶋一茂さんと社会学者の古市憲寿さんでしたので,大変面白かったです。

上記番組中,現在世間をにぎわせている「枕営業事件」に言及されていましたので,本ブログでもご紹介しておきたいと思います。

 

1 事案の概要

東京・銀座クラブのいわゆる「ママ」が,優良顧客であった会社社長と約7年間にわたり,肉体関係にあったとして,社長の妻(原告)がママ(被告)に対し,慰謝料等を請求した事件です。

 

2 判決の内容(上記判例タイムズから一部引用)

原告(社長の妻)の請求は棄却されました。すなわち,裁判所は,被告(クラブのママ)と会社社長との肉体関係は,慰謝料を発生させるような不法行為ではないと判断したわけです。 

ちなみに,被告(クラブのママ)は,いわゆる「本人訴訟」(我が国の民事訴訟法は,弁護士強制主義を採っていないため,弁護士を付けないで当事者本人が訴訟追行をすることができるのです。)であったようです。

 

裁判所が,上記結論を導いた論理は以下のとおりです。


「第三者が一方配偶者と肉体関係を持つことが他方配偶者に対する不法行為を構成するのは,原告も主張するとおり,当該不貞行為が他方配偶者に対する婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益に対する侵害行為に該当することによるものであり,ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には,当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,たとえそれが長年にわたり頻回に行われ,そのことを知った妻が不快感や嫌悪感を抱いたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解される(原告は,当該売春行為が不法行為に該当しないのは,正当業務行為として,違法性を阻却することによる旨を主張するが,違法性阻却を問題とするまでもないというべきである。)。」。

 

【コメント】 「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には,当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではない」との認定は異論もあるでしょうし,当職も了承できません。


「ところで,クラブのママやホステスが,自分を目当てとして定期的にクラブに通ってくれる優良顧客や,クラブが義務付けている同伴出勤に付き合ってくれる顧客を確保するために,様々な営業活動を行っており,その中には 顧客の明示的又は黙示的な要求に応じるなどして,当該顧客と性交渉をする『枕営業』と呼ばれる営業活動を行う者も少なからずいることは公知の事実である。」。

 

【コメント】 「公知の事実」は,「証明することを要しない」(民訴法第179条)とされていますが,要件事実である限り主張責任を認めるべきとされています(最判昭和28年9月11日裁判集民第9巻901頁)。はたして,「枕営業」は,裁判所の言うように「公知の事実」なのでしょうか。

ちなみに,当職の妻などは,本件裁判官が「枕営業」の片棒をかついでおり,自己正当化のための判決を起案したのではないかなどと過激なことを申しておりました(当職もそのような発想には至りませんでした。やはり女性の受けは悪いようです。)。

 

「このような『枕営業』の場合には,ソープランドに勤務するような女性の場合のように,性交渉への直接的な対価が支払われるものではないことや,ソープランドに勤務する女性が顧客の選り好みをすることができないのに対して,クラブのママやホステスが『枕営業』をする顧客を自分の意思で選択することができることは原告主張のとおりである。」。


「しかしながら,前者については,『枕営業』の相手方がクラブに通って,クラブに代金を支払う中から間接的に『枕営業』の対価が支払われているものであって,ソープランドに勤務する女性との違いは,対価が直接的なものであるか,間接的なものであるかの違いに過ぎない。また,後者については,ソープランドとは異なる形態での売春においては,たとえば,出会い系サイトを用いた売春や,いわゆるデートクラブなどのように,売春婦が性交渉に応ずる顧客を選択することができる形態のものもあるから,この点も,『枕営業』を売春と別異に扱う理由とはなり得ない。」。

 

【コメント】 「枕営業」と売春とが同じであるということです。突っ込みどころ満載です。 


「そうすると,クラブのママやホステスが,顧客と性交渉を反復・継続したとしても,それが『枕営業』であると認められる場合には,売春婦の場合と同様に,顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず,何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから,そのことを知った妻が精神的苦痛を受けたとしても,当該妻に対する関係で,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。」。

 

【コメント】 なかなかの衝撃をうける内容です。一般化はできないと当職は考えますが,少なからず,これからの実務に影響を及ぼしそうです。
ちなみに,本判決について控訴はされていないため,この判決が確定してしまったようです(当職としては,少なくとも東京高裁の判断を仰いでもらいたかったです。)。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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