弁護士ブログ

2015.08.31更新

(前編からのつづき)

 

 こうしてアーサー王は久しぶりに宮廷に帰還します。円卓の騎士たちも大喜びです。

 しかし,アーサー王は老婦人との約束を思い出し沈んでいます。

 約束はしたものの,美しく礼儀をわきまえた騎士をあんなに醜い老婦人と結婚させなくてはなりません。

 悩むアーサー王をみて心を痛めたアーサー王の甥であるガウェインが,アーサー王に近づきます。

 アーサー王は老婦人との約束を,ガウェインに説明しました。王に忠義なガウェインは,「私がその女性の婿となりましょう。」と言います。

 アーサー王は,美しく礼儀をわきまえたガウェインをあんなに醜い老婦人と結婚させたくありません。もちろん反対します。しかしガウェインも言い出したら聞きません。

 結局ガウェインが老婦人の良人となることになりました。

 

 仲間の騎士たちがからかう中,ガウェインと老婦人との結婚式が始まりました。花嫁は顔を背けたくなるような醜い老婦人。ガウェインは,アーサー王を裏切り者にしないための結婚,幸せというには程遠い結婚式でした。当然ながら祝いの宴も開かれませんでした。

 そして夜がきました。

 部屋には新郎新婦の二人きり。しかしガウェインは,外を見てため息ばかりついています。花嫁の顔さえ見ようとしませんでした。すると老婦人の花嫁が話しかけます。

 「わが良人よ。あなたは新婚初夜だというのに,私を見ようともせず,ため息ばかりついておられる。なぜですか?」

 するとガウェインも答えます。

 「私がため息をついている理由は3つある。1つ,あなたが老人であること。2つ,あなたが醜いこと。3つ,あなたの身分が低いことだ。」

 それを聞いて,老婦人は反論します。

 「1つ,たしかに私は年老いていますが,それだけ人よりも思慮が深く知恵に富んでいるということです。決して悪いことではありません。

  2つ,妻が醜いことは良人にとって幸運です。他の男が言い寄ることを心配しなくていいからです。

  3つ,人の価値は生まれや身分で決まるものではありません。魂の輝きによるものです。」

 

 騎士ガウェインは,返事をしないで花嫁の方へ視線を向け,愕きの目を見張りました。するとどうしたことでしょう。そこにいたのは,まばゆいばかりに輝く美しい乙女でした。

 「おまえは一体何者だ?」

 驚くガウェインに,花嫁が言いました。

 「じつは,私は邪な魔法使いに魔法をかけられて,老婦人の姿に変えられていたのです。2つの願いがかなわなければ,もとの姿に戻ることができません。若くて優れた騎士を良人にするという1つの願いが叶ったので,私は1日の半分をもとの姿ですごすことができるようになりました

 もとの姿でいられるのは,昼がいいですか?それとも夜がいいですか?わが良人よ,お選びください。」

 

 ガウェインはこう言いました。

 「その美しい姿は,二人だけの夜の時間に見せてほしい。できればその美貌を,他の男達に見られたくはないものだ。」

 それに対し,花嫁はこう答えます。

 「女というものは,昼間大勢の騎士や貴婦人たちの間に交じって,美しくていられる方が,それはそれは嬉しいんですよ。」

 それを聴いたガウェインは,しばらく考えた後こう言いました。

 「おまえの好きにするがよい。」

 すると花嫁が満面の笑みを浮かべて言いました。

 「たった今,2つ目の願いがかないました。私はもう,昼も夜も老婦人に戻ることはありません。」

 2つ目の願いが何だったのか。そう,「自分の意志を持つこと」だったわけです。

 それと同時に,その兄,つまり例の心の捻れた騎士の呪いも解けたのでした。じつは兄妹ともに,悪魔の呪いに巻き込まれていたのです。その騎士も,男らしい心の広い騎士に戻ったのでした。(おしまい。)

 

 いかがでしたでしょうか。物語から700年経った現在でも,女性はもちろん,男性も「自分の意志を持つこと」は難しいのかもしれません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.08.31更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 女性管理職の割合に数値目標の設定などを義務付ける「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が,8月28日午前,参議院本会議で自民,民主,公明各党などの賛成多数で可決され,成立しました。

 男女雇用機会均等法が制定されて,本年は30年を迎えます。女性が働く環境整備は,遅々として進んでいない現状もありますが,今後の推移をしっかり監視していきたいと思います。

 

 さて,すべての女性が最も望むものは何でしょうか。その答えは,『騎士ガウェインの結婚』(ブルフィンチ作・野上弥生子訳『中世騎士物語』(岩波文庫)に収録されています。文庫本で5頁程度の物語ですが,極めて示唆に富んでいます。)という物語の中にあります。

 今回は,前編・後編の2回にわたって,『騎士ガウェインの結婚』をご紹介しましょう。

 

 

 ある時アーサー王が法廷を開いていたとき,一人の乙女が彼の庇護を懇願しました。

 「邪な騎士に愛人を捕虜にされ,私の所有地を強奪されてしまいました。どうかお助けください。」

 アーサー王は,彼女の受けている不法を正すため,その残忍な騎士の城に到着し,勝負を挑みます。

 しかし,その城は魔法の土地に建っており,アーサー王が足を踏みこむや否や,忽ち勇気が挫けて,力が抜けてしまい,彼は施すすべもなく,騎士の捕虜になってしまいました。

 

 邪悪な騎士は,アーサー王に対し,つぎの条件を言い渡しました。

 ① 年の暮れにはまた必ずその城に戻ってくること,

 ② 『婦人が最も望むものは何か』という問に対する答えを持って来ること,

 ③ その約束を破れば,アーサー王の国土を渡すこと,

 以上の条件を受け入れたアーサー王は解放されました。

 

 アーサー王は東へ西へと馬を駆って,逢う人ごとにすべての婦人が最も望むものは何かと尋ね回りました。それぞれの女性には,「富」,「栄華と身分」,「快楽」,「追従」,「一人の雄々しく優美な騎士」などと回答してもらったのですが,どれ一つとして確かに信頼できる返事を見出すことはできませんでした。

 

 こうしてその年もやがて過ぎようとしていたある日,アーサー王が思いに沈みながら森の中を乗って行くと,とある樹の根元に思わず眼をそむけるほど見かけのみっともない老婦人がいました。その老婦人が礼にかなった挨拶をしても,アーサー王は応えませんでした。

 すると,その老婦人が「貴方はどういうお方です?私は,あなたが探しているものを与えることができます。」言いました。

 喜んだアーサー王は,老婦人に答えを聞こうとしました。しかし,老婦人が続けます。

 「ただし,条件があります。答えを教えるかわりに,美しく礼儀をわきまえた騎士を私の良人にしてほしいのです。」

 切羽詰まっているアーサー王は,老婦人と約束をしてしまいます。

 

 アーサー王は,邪悪な騎士の城に出向きます。邪悪な騎士が出てきます。「さあ,約束の日だ。答えを言ってみろ。」

 アーサー王は,今日まで尋ねて得た答えを片っ端から言っていきます。

 「富」,「栄華と身分」,「快楽」,「追従」,「一人の雄々しく優美な騎士」……。

 「違う,違う…」邪悪な騎士は上機嫌です。

 アーサー王の答えが尽きたころ,邪悪な騎士が言いました。「君は償いを払わん。君と君の国土は私が没収する。」

 その刹那,アーサー王は,老婦人に教わった答えを言いました。

 「あらゆる婦人の切望は,『すべての女が自分の意思を持つこと』である。」

 邪悪な騎士は悔しがりました。「君にそんなことをしゃべったのは私の妹だ。報讐(むくい)が彼女の上にあれ!いつか必ずこの返報はしてやる!」

 

(後編へつづく)

投稿者: 弁護士濵門俊也

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