弁護士ブログ

2015.11.18更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 フランス共和国(以下「フランス」といいます。)の首都パリで,現地時間の11月13日夜,コンサートホールやレストランなどで,爆弾や銃撃による同時多発テロ事件が起きました。ニュース報道によれば,129人が死亡し,350人以上が負傷したとのことです。

 今回のテロ事件を受けて,海外で駐在や旅行をしている際に,テロに遭遇するかもしれないと不安に思った人も少なくないのではないでしょうか。外国での事故に備えて,海外旅行保険に加入する人も多いかと思いますが,どこまで補償されるのでしょうか。

 すでにお気づきの方もおられるように思いますが,保険の約款の中には「免責条項」が定められており,特定の事情で発生した損害について「保険会社は保険金を支払いません」と規定されているものがほとんどです。この特定の事情の中に「戦争」「外国の武力行使」「革命」「内乱」「武装反乱」等といった文言が含まれていることは珍しくありません。

 そこで,今回はテロと免責条項について解説します。

 

●一般的には,テロは免責条項に該当しない

 各保険会社の海外旅行保険において定められている免責条項は,いわゆる「戦争危険」として免責される旨が定められています。

 他方,警察庁組織令によりますと,テロとは「広く恐怖または不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」であると定義されています(警察庁組織令第39条4項)。

 また,ある大手保険会社のホームページには,「政治的,社会的,宗教的もしくは思想的な主義もしくは主張を有する団体もしくは個人またはこれと連帯するものがその主義または主張に関して行う暴力的行動」とされているものもあります。

 係る定義からしますと,テロが「暴力主義的破壊活動」や「暴力的行動」にとどまる以上,「戦争危険」には該当しないとされることとなりますし,実際もそのように解釈されています。

 よって,海外でテロの被害にあった場合,海外旅行保険により損害を補償してもらうことが可能となるのが一般的です。

 

●テロから「戦争」に発展してしまった場合の取り扱い

 では,今後「テロ」をきっかけに「戦争」に発展してしまったケースにおいては,どうなるのでしょうか。

 あまり考えたくない事態ですが,テロ行為が組織的かつ間断なく継続的に行われ,平面的な広さをもつようになり,これを阻止しようとする勢力と交戦状態に至り,「戦争」や「内乱」等に該当するような場合には,「戦争危険」に該当すると想定できます。そうした場合,「戦争危険」に該当した以降の損害については,免責事由に該当することが想定されます。

 免責事由に該当する「外国の武力行使」などを起因として生じた傷害または疾病に対しては,保険金が支払われないおそれがあるでしょう。

 

 フランスのオランド大統領は11月16日,自国が「戦争状態にある」として,テロ直後に出した非常事態宣言の3か月延長を議会に要請する方針を明らかにしました。もし今後,フランスで大きな殺傷事件が起きた場合は,保険会社が「戦争」と判断して,保険金を支払わない可能性もあり得るかもしれません。

 とてもかくても,海外旅行保険に加入する際には,しっかり約款を確認したほうがいいと思います。 

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.08.25更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 交通違反を犯した場合,悪質な違反行為に対しては公判請求され,「懲役刑」が科されます。また,比較的重い違反行為には「罰金刑」,軽微な違反行為には「反則金」,そして駐車違反の「放置違反金」がそれぞれ科されます。いずれも似ているように思えますが,それぞれの意味はまったく異なります。

 一般的な会話においては,罰金刑も反則金も放置違反金も,「罰金」と呼称していますが,決して同じものではございません。

 行政上の制裁金としての反則金や放置違反金,刑罰としての罰金刑,それぞれの違いをしっかり理解しましょう。

 

 

第1 反則金とは

 1 反則金制度

 反則金制度とは,車を運転した者が犯した違反行為が比較的軽微な場合(反則行為といいます。),指定期日まで(青切符が発行され反則金納付書を受け取り受理した日から8日以内)に所定の反則金額を最寄りの金融機関へ納付を行えば,犯した交通違反に対し刑事裁判を反則金を納めることで免除する制度です。

 ここにいう反則金とは,法律上は,警察本部長の通告に基づいて反則者が「任意に納付する行政上の制裁金」とされています。

 反則金を支払えば,刑事上の責任は生じず前科も付きません。

 しかし,任意の納付であるとはいえ,納付しなければ検察庁から呼出しを受けることとなり,挙句の果てには罰金に変化してしまいます。

 また,違反の摘発に納得せず刑事裁判を受けることとなれば,反則金制度は取消しとなり,判決により無罪又は罰金刑のどちらかとなります。

 罰金刑の場合には,刑罰ですから,前科一犯となってしまいます。

 

 2 反則金の使い道

 納付された反則金は,まず国に納められ,交通安全対策特別交付金として,毎年,交通事故の発生件数や人口の集中度などを考慮して都道府県や市区町村に交付されています。

 この交付金は,「交通安全対策特別交付金に関する政令」に基づき,信号機,道路標識,道路標示,歩道,ガードレール,横断歩道など,道路における安全施設の設置と管理等に要する責用に充てられ,目的外使用はできないこととなっています。

 

第2 放置違反金とは

 駐車違反(放置違反)の行政制裁金のことであり,反則金と同額で,納付は違反をした運転者でなく,その車の車検証等の車両登録上の使用車(運転者と同じであっても)に課せられます。

 

 

第3 罰金刑とは

 1 刑罰としての罰金刑

 罰金刑とは,法律に定められた刑罰の一つで,「前科」となります。

 単純に罰金の金額が高いというだけの問題ではありませんので,ご注意ください。

 すなわち,反則金や放置違反金は,納めた時点で違反行為に対する処理が終了します。

 しかし,この違反の場合は,違反者は刑事裁判を受けることとなり,被疑者として検察庁で取調べが行われ,被告人として刑事裁判により刑罰が決められます。

 

 2 手続の流れ

 被疑者は,一度以上検察庁に出頭し,違反した事実に関して取調べが行われ,刑事裁判を受けることにより刑罰が決められます。 

 もっとも,一口に刑事裁判といっても,被疑者が違反した事実を認め不服がなく,検察官が「略式起訴」による処理が相当であると判断した場合は,公判に出頭することなく,書面上だけで簡易な「略式裁判」を受けることが可能となります(通常の事件のほとんどは,この略式起訴,略式裁判となります。)。

 

 かかる略式裁判によって下された略式命令に応じれば,あとは罰金の処分が決定します。

 略式命令が下されるのは,被告人が違反した事実を認め,不服がない場合ですから,実質的な審理もありませんし,無罪にはなりません。

 もちろん,被疑者において違反した事実に不服があり,略式裁判に応じない場合は,検察官により公判請求(公開法廷における審理を求める起訴のことです。)され,正式裁判となります。

 正式裁判となった場合には,有罪(懲役刑か禁錮刑となるでしょう。罰金刑はほとんどありません。)か無罪のどちらかしかありません。

 

 公判請求された場合でも前科がなく,今後も同様の違反を犯す可能性が少ないなどと裁判官が判断をした場合,執行猶予が付くことがほとんどですから,公判請求即実刑とはなりません。

 交通違反で実刑判決になる場合は,死亡・重傷事故を除いて,よほど悪質な違反を継続的に繰り返すなどの極悪ドライバーでない限り,ごく稀であるように思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.08.07更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

1 「人身事故証明書入手不能理由書」とは?

 

 この書類は,読んで字のごとく「人身事故の交通事故証明書を入手できない理由を書いた書類」のことです。比較的軽度な自動車事故においては,事故発生後110番通報をし,警察に現場確認をしてもらったとしても,大抵「物損事故」として処理をされてしまいます。

 しかし,後日むち打ち症などを発症した場合は,事実上「人身事故」となります。

 ただし,記録上は「物損事故」として処理がされているため,このままでは自賠責保険の適用が受けられません。

 

 そこで登場するのが,上記「人身事故証明書入手不能理由書」です。後日むち打ち症などを発症したような状況に陥りますと,加害者側の任意保険会社からこの書類が送られてきます。そこに必要事項を記載して申請することにより,自賠責保険の適用を受ける,というような流れとなります。

 なお,申請の際,物損事故扱いの「交通事故証明書」も必要となりますので,お忘れなく。

 

 

2 さて,この人身事故証明書入手不能理由書を利用する際には,必ず覚えておいて欲しいことがあります。

 

■「あくまで『理由書』であり,『証明書』ではない」というリスク

 

 「交通事故証明書」と「人身事故証明書入手不能理由書」の大きな違いは,その証拠能力です。人身事故としての交通事故証明書があれば,それ自体で人身事故があったという証明は足りるため,自賠責保険から保険金が支払われます。

 

 しかし,「人身事故証明書入手不能理由書」は,あくまでも人身事故による交通事故証明書を入手できない理由を書いた自己申告書類なのです。ということは,その気になれば嘘を書くこともできてしまうのです。

 

 そのため,必ずしも保険会社がそれを鵜呑みにしてくれるとは限らないのです。これが,みんなが忘れているリスクです。

 

■可能な限り「警察署で人身事故へ切り替えること」が最優先!

 

 交通事故後,1週間から10日以内程度であれば,医師の診断書を書いてもらい警察署で手続をすれば,物損事故から人身事故に切り替えを行なうことができるでしょう。

 

 そうすれば,「人身事故証明書入手不能理由書」よりも確実な「人身事故の交通事故証明書」が入手できますので安心です。

 

 警察は,人身事故への切り替えを嫌がるため,「人身事故証明書入手不能理由書」の利用を勧めてくる場合がありますが,より確実に自賠責保険から補償を受けるためには,やはり人身事故としての事故証明の入手が第一優先です。「人身事故証明書入手不能理由書」はあくまでも「入手不能」な場合に限り利用すべきなのです。

 

■「人身事故証明書入手不能理由書」には何を書くの?

 

 「人身事故証明書入手不能理由書」には,加害者,被害者の氏名や住所といった基本的な情報はもちろん記載しますが,ポイントとなるのは入手できない「理由」についてです。もちろん嘘は許されません。交通事故後しばらくしてから症状が発症した等の理由であれば,理由が認められる可能性も高いでしょう。

 

■物損から人身に切り替えたい

 

 そういった相談があれば,早めに弁護士濵門俊也にご相談ください。非協力な加害者,保険会社を動かすには,弁護士の力を借りるのが早いです。また,慰謝料・示談金の請求でも増額の期待がもたれます。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.06.14更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

連日,北海道砂川市の国道交差点で乗用車と会社員の軽ワゴン車の衝突に絡み,家族4人が死亡した事故に関する報道がなされています。被疑者らの供述も漏れ伝わってきますが,あまりに不合理な弁解に終始している印象を受けます。また,検察官が本件を何罪で起訴するかも注目してみたいところです。

 

上記事故(当職は「事件」といった方がよいと思います。)に関連して,「被害者らは軽自動車を運転していたのであるから,乗車定員をオーバーしているのではないか」との疑問をもたれた方が多くおられるようです。

そこで,乗車定員オーバー(法令上は「定員外乗車」といいます。)について,説明をしておきます。

 

 

 

乗車定員については,「道路交通法」ではなく,「道路運送車両の保安基準(昭和26年7月28日運輸省令第67号,最終改正は,平成27年3月31日国土交通省令第18号)」の第53条に規定があります。

 

(乗車定員及び最大積載量)

第53条 自動車の乗車定員又は最大積載量は,本章の規定に適合して安全な運行を確保し,及び公害を防止できるものとして,告示で定める基準に基づき算出される範囲内において乗車し又は積載することができる人員又は物品の積載量のうち最大のものとする。ただし,二輪の軽自動車(側車付二輪自動車を除く。)にあっては乗車定員2人以下,車両総重量2トン未満の被牽引自動車にあっては乗車定員なしとする。

2 前項の乗車定員は,12歳以上の者の数をもって表すものとする。この場合において,12歳以上の者1人は,12歳未満の小児又は幼児1.5人に相当するものとする。

※ 横書きのため,適宜読みやすく修正した。

 

 

また,定員外乗車の罰則ですが,つぎのとおりです。

 

【行政処分】基礎点数1点

酒気帯びの場合:0.25mg/l以上は25点,0.25mg/l未満は14点

※警視庁行政処分基準点数参照

【反則通告制度】大型車7,000円,普通自動車6,000円,二輪車6,000円,小型特殊自動車5,000円,原動機付自転車5,000円

※警視庁反則金一覧表参照

 

【道路交通法第57条】

車両(軽車両を除く。以下この項及び第58条の2から第58条の5までにおいて同じ。)の運転者は,当該車両について政令で定める乗車人員又は積載物の重量,大きさ若しくは積載の方法(以下この条において「積載重量等」という。)の制限を超えて乗車をさせ,又は積載をして車両を運転してはならない。ただし,第55条第1項ただし書の規定により,又は前条第2項の規定による許可を受けて貨物自動車の荷台に乗車させる場合にあっては,当該制限を超える乗車をさせて運転することができる。

※ 横書きのため,適宜読みやすく修正した。

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.05.29更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

いよいよ,平成27年6月1日(月)から改正道路交通法の一部が施行され,「危険行為」を繰り返す返す悪質な自転車の運転者に対し,講習が義務づけられることとなります。

この「危険行為」の類型が定められたのは,道路交通法そのものではなく,自転車の講習に関する「道路交通法施行令」の改正によるものです。

そこで,今回は,新たに施行される改正道路交通法についてみていきます。

 

1 道路交通法改正の狙い

今回道路交通法施行令が改正された狙いは何なのでしょうか。

従来,自転車の交通違反で摘発されたとしますと,反則金制度がなかったため,ただちに刑事手続となってしまう取扱いとなっていました。そのため,さほど重大ではない違反については,警察も摘発をためらっておりました。

しかし,今回,「自転車運転者講習制度」が整備されたことにより,刑事手続にしなくても「講習」で済ませることができるようになったため,これまでは摘発を見送っていたさほど重大でない違反も摘発されやすくなる可能性が増えました。

 

 

2 自転車運転車講習制度の導入

それでは,「自転車運転者講習制度」とはどのような制度なのでしょうか。

この制度は,3年以内に2回以上の「危険行為」を繰り返す自転車運転者には,「自転車運転者講習」の受講が義務づけられるのです。具体的には,受講命令が出てから3か月以内に3時間の講習を受講し,ご自身の自転車運転がいかに危険であったのかを学んでいただくというものです。ちなみに,講習料は,標準額で「5700円」とされています。

しかし,受講命令を無視しますと5万円以下の罰金が科されることとなります。

 

 

3 危険行為の類型

改正道路交通法で「危険行為」とされているのは,以下の14項目です。

 

⑴ 信号無視,⑵ 通行禁止違反,⑶ 歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反),⑷ 通行区分違反,⑸ 路側帯通行時の歩行者の通行妨害,⑹ 遮断踏切立入り,⑺ 交差点安全進行義務違反等,⑻ 交差点優先車妨害等,⑼ 環状交差点安全進行義務違反等,⑽ 指定場所一時不停止等,⑾ 歩道通行時の通行方法違反,⑿ 制動装置(ブレーキ)不良自転車運転,⒀ 酒酔い運転,⒁ 安全運転義務違反

 

 

4 今までどおり運転していれば問題ないんじゃない?

ここまでお読みになられた方の中には,「今までどおり運転していれば問題ないよね」と思われた方もおられるかもしれません。

しかし,それはたまたまこれまで事故に遭っていないだけであって,実際は「危険行為」をしてしまっていることがあるのではないでしょうか。

 

たとえば,信号無視,2人乗り,飲酒運転,夜間のライト無点灯といったものが「違反」であり,「危険行為」となることは,多くの方が認識されていると思いますし,「例外を除き,自転車は車道の左側を通行しなくてはならない」というルールを知らない人は少ないと思います。しかし,これらのルールが,実際に遵守されているでしょうか。

また,最近目につくのは,自転車を運転しながら携帯電話やスマートフォンを操作している人です。「携帯電話等の操作は『危険行為』に入っていないのでは?」といった疑問をもたれた方もおられるかもしれませんが,携帯電話等の操作は「危険行為」のひとつである「安全運転義務違反」に該当します。

 

※ 道路交通法第70条

「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」

 

 

5 「自転車保険」のススメ

実際,自転車による交通事故が多発しているのは事実であり,当職も相談を受けます。しかも,悲惨な事故になりやすく,場合によっては多額の賠償金を支払うこととなる事案も少なくありません。当職は「自転車保険」への加入を勧めています。

交通法規を遵守し,安全運転を心がけることは,自転車も自動車等も何ら変わりはありません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.05.28更新

交通事故による損害賠償請求をする際の証拠はどう集めるの?

 

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

1 交通事故による損害賠償請求の特徴

交通事故による損害賠償請求の法律上の根拠は,民法の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条,同第710条)です。そして,被害者が不法行為の要件事実について主張・立証責任を負うものとされています。しかし,この原則を貫くことは被害者保護の観点から問題があります。

そこで,交通事故による人身損害の場合には,被害者保護の要請から自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます。)という特別法があります。これにより,被害者は加害者である運転者のみならず保有者等の運行供用者に対する責任追及ができるとされています。また,自賠法により,故意・過失の立証責任が加害者側に転換され,事実上,加害者に無過失責任に近い責任が課されています。このように,交通事故による損害賠償請求には「被害者保護」という特徴があります。

また,交通事故による損害賠償請求については,長年の実務の蓄積から損害額の算定や立証方法が,他の分野に比べて定型化している点が特徴です。

そして,自動車保険制度の普及によって,交通事故紛争の窓口として保険会社が登場してくる点も特徴といえます。

 

 

 

2 請求に必要な証拠の集め方

⑴ 交通事故発生の証明

交通事故発生の証明は,通常,「交通事故証明書」によることとなります。

当該交通事故の発生について,警察に届出がなされていれば,所轄の自動車運転センターで手数料を支払って,これを発行してもらうことができます。この交通事故証明書は,郵送によって交付を受けることもできます。この場合,警察署等に備え付けられている「交通事故証明書交付申請書」に必要事項を記入して手数料を振り込むこととなります。

 

⑵ 交通事故態様の証明

ア 刑事記録

事故態様の立証の際,もっとも重要な証拠資料は当該交通事故の刑事記録でしょう。この刑事記録は,被疑者が起訴されていれば,供述調書を含む確定刑事記録全体の閲覧・謄写が可能ですが,被疑者が不起訴処分に付されている場合は,実況見分調書のみの閲覧・謄写が可能とされています。

この確定刑事記録(不起訴事案については実況見分調書となりますが,以下,同様とします。)を閲覧・謄写するためには,前記の「交通事故証明書」をもとに,所轄の警察署の交通課に電話を架けて,「送致年月日」・「送致先」・「検番」・「罪名」を問い合わせます。その後,警察署から得られた情報をもとに,送致先の検察庁に対し,確定刑事記録の閲覧・謄写申請をすることとなります。

弁護士会照会によることもできますし,訴訟提起後であれば,裁判所に対し,文書送付嘱託を申し立てることにより収集することもできます。

 

イ 車両の破損状況

車両の損傷部位や損傷の程度から,衝突の状況が推測できることもあり得ます。その場合,車両の破損状況を写真や修理見積書等によって証明する場面もあるでしょう。

 

ウ 関係者の聴取報告書

不起訴事案の場合,当事者や目撃者等の供述調書が作成されていたとしても,入手できません。この場合は,所轄警察署の担当警察官から事情を聴き,目撃者の有無,所在等を聞き出し,当該目撃者に証言を依頼しなければならないこともあり得ます。

 

エ 事故現場の状況

実況見分調書に現場見取り図が添付されていたとしても,それだけではやや分かりづらい場合もあり得ます。その場合は,実地調査を行って写真撮影や図面を作成したり,インターネット上の地図・写真等を用いて証拠化することとなります。

 

⑶ 損害の証明

ア 治療関係費

傷病については「診断書」,治療費については「診療報酬明細書(レセプト)」を用います。

 

イ 通院交通費

通院交通費については「領収書」や「請求書」を用います。公共の交通機関(電車やバス等)を利用したなど,領収書がない場合は,経路を明らかにし,費用を割り出します。自家用車等を利用した場合は,経路と距離からガソリン代を請求します。

 

ウ 後遺障害

後遺障害の等級は,「後遺障害等級認定票」によります。この後遺障害等級認定票を取得するためには,まず,担当医に「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(通常,後遺障害診断書といわれますので,以下「後遺障害診断書」といいます。)」を作成してもらいます。この後遺障害診断書を取得した後,加害者の自賠責保険の保険会社や任意の保険会社等を通じて,損害保険料算出機構に後遺障害等級の申請をすることとなります。

 

エ 休業損害・逸失利益

休業損害・逸失利益を算定する際,基礎となる被害者の収入については,「源泉徴収票」や「確定申告書」によります。勤務先に収入や休業日数についての証明書を発行してもらうこともしばしばです。

 

オ 物損

車両損害については,「修理費の請求書」・「領収書」・「明細書」等を用いて算定します。車両損害の場合は,車両時価相当額が争点となることも多いです。この場合,有限会社オートガイド社が発行している「オートガイド自動車価格月報(通常,レッドブックと呼ばれます。)」で小売価格の証明をすることもあります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.05.26更新

損害賠償額の算定における基準は一つではないの?

 

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

交通事故における損害賠償金の法的根拠は,民法の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法第709条,同第710条)にあります。

 

もっとも,法律には,「損害賠償を請求できる」ということが規定されているだけで,「実際にその金額をいくらにするのか」ということについては規定されていません。


一口に「不法行為」といっても,その内容は事案ごとに異なります。

交通事故に限ってみたとしても,すべてがまったく同じ事故はないのですから,やはりその内容は事案ごとに異なるといわざるを得ません。

 

したがって,法律で画一的に損害賠償の金額を定めてしまうということは現実的ではありません。
とはいうものの,まったく何も基準がないということも問題です。特に裁判の場合には,類似の事案であるにもかかわらず,裁判官が変われば判断基準も異なり損害賠償金額も大きく変わってしまうというのでは,法的安定性を害しますし,公平な裁判を実現できません。

 

そのため,交通事故による損害賠償額の算定については,実務上三つの基準が存在しています。
具体的には,自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の支払基準(自賠責基準),任意保険会社の支払基準(保険会社基準),裁判基準(弁護士基準)があります。

 

 

1 自賠責保険の支払基準(自賠責基準)


自賠責保険は,国庫負担により,被害者の最低限度の損害填補を図ろうという公的制度です。
あくまで最低限度の補償ですから,損害のすべてが賄われるわけではありませんが,加害者の支払能力にかかわらず一定額の補償を受けられるという被害者保護において最も重大な制度といえます。

 

この自賠責保険における損害賠償額(または保険金額)については,法令によって一定の支払金額・支払基準が設けられています。そして,自賠責損害調査事務所によって損害額が査定されることになります。

 

自賠責保険による損害賠償額は,上記のとおり最低限度の補償です。

したがって,自賠責保険だけでは損害を填補しきれないという場合もあるでしょう。
その場合には,それを超える部分を加害者(または加害者側の加入している任意保険会社)に請求することとなります。

 

 

2 任意保険の支払基準(保険会社基準)


加害者が任意保険会社の自動車保険に加入している場合,被害者は,その加害者側任意保険会社から損害賠償金の支払を受けることができます。


任意保険会社に対しては,自賠責保険の支払基準を超える金額を請求することが可能ですが,弁護士介入前の交渉段階では,損害の全部を填補するだけの金額を支払おうとはしません。


それはなぜかといえば,各任意保険会社には,それぞれ各社ごとに内部的な支払基準があるからです。

弁護士介入前の交渉段階では,この各社ごとの支払基準を超える支払をしてくれないのが通常です。


かつては,各社に統一的な任意保険会社の支払基準がありましたが,現在では保険の自由化によって,各社ごとに支払基準が異なります(対応もまちまちです。ただし,大きな違いがあるというわけでもありません。)。

 

任意保険会社の支払基準は,もちろん自賠責保険の支払基準よりも高額となりますが,後記の裁判基準に比べると少額です。損害額によっては,大幅に少額となってしまう提示をされることもありますので,注意が必要です。

 

 

3 裁判基準(弁護士基準)


裁判所が,訴訟における基準を設けていたとして,それを公開するということはありません。

裁判例の積み重ねをみるほかないです。

ただし,実務上,裁判所においても利用されている基準があります。それが「弁護士基準」と呼ばれる基準です。

 

「弁護士基準」というのは,具体的にいいますと,日弁連交通事故相談センター東京支部による「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」といいます。)という書籍に掲載されている基準のことをいいます。

この赤い本の基準は,任意保険会社の支払基準よりも高額となります。金額的にいえば最も高額となる可能性があるのが,この基準なのです。
そして,弁護士に依頼していただければ,任意保険会社との示談交渉は,上記の弁護士基準で損害額を算定し,交渉に臨みます。

 

 

4 まとめ


実際の事故において,任意保険会社が提案する金額は,「保険会社基準」にしたがったものであり,「裁判基準」よりもはるかに低いケースがほとんどです。

しかも任意保険会社の言い値を鵜呑みにして受諾してしまう方が非常に多いのです。
それではもったいない。

 

上記の「三つの基準」を知っているかどうかで損害額が変わってしまうことはおかしいと思いませんか。
弁護士が介入し,裁判基準による適切な賠償額を獲得できるようサポートさせていただく意味がそこにあります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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