弁護士ブログ

2015.07.23更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 昨日(平成27年7月22日),女優の杏さんが主演するドラマ『花咲舞が黙ってない』第3話が放送されました。今回は,300万円が紛失した六本木支店を舞台としたお話でした。

 ゲストは,交際相手(と思っていた)の男性に騙され銀行のお金に手をつけてしまうテラー・吉川恭子(内山理名さん),ブランダージュ社長で結婚詐欺師・馬場浩一(袴田吉彦さん),六本木支店営業課長・神田隆(正名僕蔵さん),テラー・伊沢良子(宮地雅子さん),テラー・枡野理江(大坪あきほさん),六本木支店支店長・久保寺敏也(遠山俊也さん)でした。

 

 弁護士目線からしますと,吉川恭子(以下「吉川」といいます。)や馬場浩一(以下「馬場」といいます。)の刑事責任がどのようなものかをつい検討したくなります。そこで,今回は,ドラマの登場人物の刑事責任について説明いたします(検察起案の出来損ないのような感じになりそうです。当職は修習時代,検察起案は少し苦手でした。)。ちなみに,舞には馬場に対する暴行罪と侮辱罪が成立しそうですが,不問に付されるでしょう。

 

 

第1 吉川の罪責

 

 1 吉川の罪責について,劇中では「横領」の犯人といわれていましたが,吉川は「窃盗」に問われると思います。最初に疑われたテラーの枡野の台詞にあったとおり,「私は盗んでいません」というのが正しいのです。「盗難事件」なわけです。

 

 2 窃盗も横領も他人の財物を領得する罪ですが,両者の分かれ目は,吉川が他人の財物を「占有」しているか否かという点にあります。吉川が現金を「占有」していれば「横領」ですし,「占有」していなければ「窃盗」というわけです。

   では,だれが銀行の預金を「占有」しているかといえば,劇中の設定にしたがえば,六本木支店の支店長・久保寺となります。テラーにすぎない吉川には独自の「占有」を認めることはできません。

 

 3 そうしますと,まず,7月24日(金)の300万円については,窃盗罪が成立することとなります。ただ,証拠的には公判を維持できるほどのものがあるかは検討の余地があります。もちろん,被疑者である吉川の自白がありますが,それだけで有罪を認定することはできません。かりに直接証拠が「防犯カメラの画像のみ」であるとしますと,吉川は馬場に対し,ノベルティグッズの時計が入っていた箱(この中に300万円の現金が入っていることをどのように証明するかが重要となります。)を渡しているに画像にすぎないともいえ,検察官も慎重に起訴を検討することとなりそうです。

   では,7月31日(金)の300万円についてはどの段階で窃盗罪が成立したといえるのでしょうか。劇中で吉川は,300万円を馬場に渡す前に取り分けていましたから,取り分けた時点で占有を移転させていたといえそうです。もう少し固いところで認定するとすれば,吉川が馬場にまさに手渡した時点で既遂と認定してもよいかもしれません。

   このように,吉川の行為には,2つの窃盗罪が成立し,両者は併合罪となります。

 4 残る問題としては,吉川と馬場との共犯関係の有無があります。

   劇中において,吉川は「自分が勝手にやったこと」と述べていましたし,馬場も「あいつが自分でやったんだろ」と述べていましたから,二人の共謀を認定するのは難しいともいえます。ただ,上記の二人の供述は信用できません。本件を確実に遂行するには吉川と馬場の連携が不可欠であるからです。おそらく,いずれ自白すると思います。

   共謀関係が成立した場合,吉川には窃盗罪の共同正犯が成立します。

 

 

第2 馬場の罪責

 

 1 当職としては,馬場には窃盗罪の共同正犯が成立すると考えています。かりに,吉川と馬場との間で共犯関係が認められないとしても,馬場は,間違いなく犯罪行為を行っています。

   まず,7月24日の300万円及び7月31日の300万円に対しては,盗品無償譲受けの罪が成立します。

 

 2 さらに,結婚詐欺(単に結婚する意思がないのにすると言っているだけであれば,とくに刑事責任を問われることはありませんが,本件はそれにとどまらず,お金を騙し取っている点が刑事責任を問われます。)をはたらいた点については,詐欺罪が成立します。

 

 

第3 刑事裁判の行方

 

 1 ここまで来たので,老婆心ながら刑事裁判の行方も占ってみます。

   まず,馬場の実刑は免れないでしょう。600万円を盗むという行為は結果が重大ですし,とくに詐欺による金額が数千万円(下手したら億単位かもしれません。)にもなりそうです。お金を持っていないからこそ詐欺や窃盗をはたらいたのですから,示談もできないでしょう。

 

 2 他方,吉川の方は微妙です。もし弁護人に選任されたら,何とか執行猶予付き判決を目指すこととなるでしょうが,容易ではないと思います。「300万円については被害者に返還され実害がない」,「主犯は馬場であり,被告人は従属的地位にあったにすぎない」,「懲戒解雇され社会的制裁を受けている」,「反省している」,「初犯である」等の被告人にとって有利な事情があること以外に,何とか銀行と示談を成立させることが必須です。舞にも嘆願のために動いてもらうといいですね。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.07.01更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

昨日(平成27年6月30日),神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線下り「のぞみ225号」(16両編成)の車内で火災が発生したとのニュース報道がありました。乗客の男性が車内で油のような液体をかぶり,火を点けたといいます。その男性は焼身自殺を図ったのではないかとみられています。

 

ニュース報道によりますと,油のような液体をかぶって火を点けたとみられる71歳の男性は死亡し,また,乗客の50代女性も煙を吸って死亡されたようです。そのほかに,乗客ら26人も煙を吸うなどして重軽傷を負い,うち7人が入院されたようです。

新幹線の車内で火災が起きるのは初めてのことであり,新幹線内で起きた事件・事故で最悪の被害となったといわれています。

 

神奈川県警察は,男性が焼身自殺を図ったとみて,殺人と現住建造物等放火の疑いで捜査していることが報じられています。

そこで,本件のように周囲の人間を巻き込むような自殺は犯罪とならないのでしょうかとの疑問をもたれた方もおられると思います。以下,その疑問にお答えいたします。

 

 

1 自殺行為自体は犯罪ではない

 

まず,日本の刑法では自殺に関与した者を処罰する規定はありますが(刑法第202条前段),自殺すること自体を処罰する規定はありません。すなわち,自殺すること自体は,犯罪ではないのです。

 

2 本件は,放火の罪,傷害の罪,場合によっては殺人の罪に該当する可能性はある

 

ただし,本件は走行中の新幹線の車内という密室で火災を発生させた形で自殺をしたのですから,現在建造物等(放火の客体である「等」には汽車,電車,艦船又は鉱坑が列挙されています。)放火罪(刑法第108条)に該当する可能性があります(刑法第108条の罪は,人が現在する電車を焼損した場合にも成立するのです。)。

 

新幹線車両のような人が現に存在する密室で,揮発性の高い液体をかぶって火を点ければ,車両に燃え移ることは容易に想定できます。

男性がまいたとされている「油のような液体」が揮発性の高いガソリンなどであった場合,少なくとも車両に燃え移っても構わないと考えていた(この状態を「認容」といいます。),すなわち,放火の未必の故意があったと考えられます。

 

また,火災を引き起こす行為によって,人を負傷させたり,他の乗客が死亡させたりしたという点については,少なくとも,傷害罪や傷害致死罪に該当する可能性があります。

 

場合によっては,周囲を巻き込んで煙や火で死者が出ても構わないと認識していた,すなわち未必の殺意があったとして,殺人罪に該当する可能性もあると思います。

 

 

3 被疑者が死亡してしまった場合の手続

 

このように被疑者の行為は,犯罪行為に該当し得るのですが,死者に刑事罰を科すことはできません。よって,被疑者が死亡している場合,検察官としては,不起訴処分とせざるを得ません。被疑者が死亡したときは,適法に刑事裁判をする条件(これを訴訟条件といいます。)を欠くこととなるからです(刑事訴訟法第339条第4号参照)。

具体的には,検察官が「被疑者死亡」の主文で不起訴裁定書という文書を作成し,不起訴処分とします。

 

 

4 被疑者の遺族の民事責任

 

ただし,被疑者の遺産(遺産には,プラスの財産とマイナスの財産を含むからです。)を相続した遺族が,被害者らに対し,民事上の損害賠償責任を負う可能性はあると思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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