弁護士ブログ

2016.06.02更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 千葉地方裁判所は本日(平成28年6月2日),覚せい剤取締法違反の罪に問われた女性の被告人(37)に対し,1日から始まった「刑の一部執行猶予制度」を適用しました。裁判所は,懲役2年の実刑とし,そのうち6か月については保護観察付き執行猶予2年とする判決(求刑3年)を言い渡しました。同制度の適用は全国初とみられます。

 上記判決主文によりますと,上記被告人は,1年半服役した時点で出所することとなり,その後2年間保護観察下で過ごすこととなります。この間に再び罪を犯さなければ刑務所収容されることはありません。

 ただ,上記被告人は,昨年3月にも,同罪で懲役2年6月・執行猶予4年の有罪判決を受けておりますので,今回の有罪判決により,前刑の執行猶予は取り消されます。上記被告人は本件で受けた上記1年半に加え2年半(合計4年)の間服役することとなります。

 上記被告人は少なくとも「前科2犯」ということとなりますが,実は「前科」という言葉は法律用語ではありません。また,「前科」は消えることがあります。そこで,今回は「前科」について解説いたします。

 

●「犯罪人名簿」と「刑の消滅」

 前述のとおり「前科」という言葉は法律用語ではなく,いろいろな意味で使われています。一般的には,とくに懲役刑を受けて刑務所に収容された者といった意味で使われることが多いようです。法律的には有罪判決を受けたという事実が,選挙資格や医師・弁護士などの職業制限,あるいは叙勲の対象者から除外するという意味で重要になってきます。

 そのため,(交通違反を除く)罰金刑以上の刑罰が確定した者について,その戸籍を管理する市区町村に「犯罪人名簿」が置かれており,検察庁からの通知にもとづいて,有罪判決や科刑の記録が「前科」として登録されています(これが一般の人の目に触れることはありません。)。

 ただ,刑罰を受けたという事実は,公私さまざまな場面で不利益な事実として影響します。不必要に社会復帰の妨げになることは避けるべきですし,本人の更生のチャンスをつぶさないことが,結果的に社会にとってプラスとなります。

 そこで,刑法には「刑の消滅」という規定があります(刑法34条の2)。具体的には,懲役や禁錮の刑で刑務所に行ったときはその後10年,罰金刑であれば5年の聞に再び罰金刑や懲役刑を科されなければ,法律上,刑を受けたことがないものとして取り扱われることとなっています。この場合,「犯罪人名簿」から削除されて,前科がリセットされるわけです(ただ,処罰によって失った資格は元に戻りません。)。

 また,いわゆる実刑ではなく,執行猶予付きの判決を受けた人は,執行猶予の期間が無事に過ぎれば,その時点で法律上は刑の言渡しを受けた者として取り扱われないことになっています(刑法27条)。これも,一度犯した過ちを許し,更生を促すための制度です。

 

●消えた前科は履歴書に書く必要はない

 履歴書には「賞罰」について書く欄が設けられていることがあります。この「罰」は,「確定した有罪判決」という意味ですが,上述したとおり,懲役刑や禁錮刑はその執行を終えたときから10年(罰金刑の場合は5年)が経過すると刑が言い渡された事実が消えますので,有罪判決を受けたという事実を自ら積極的に書く必要はありません。

 ちなみに,かつて「懲戒解雇」を受けたとしても,それは「確定した有罪判決」ではありませんから,これも書く必要はありません。

 

●ただし,前科は消えるが犯歴は残る

 以上のように,「犯罪人名簿」に一度掲載されても,時間の経過とともに抹消されるわけですが,この制度とは別に「犯歴票」というものがあります。これは明治時代から作成されているもので,検察庁が管理しています。明治15年以来の前科者一人ひとりについての有罪及び科刑の状況が逐一記録されています。これはもっぱら刑事裁判や検察事務の適正な運営のための資料として利用されるものであり,これが一般的な前科照会に使われることはありません。

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投稿者: 弁護士濵門俊也

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