弁護士ブログ

2015.06.22更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

仕事中のケガや病気で3年を超える療養を続ける労働者について,使用者が一定の補償金を支払えば解雇できる解雇制限の例外をめぐる訴訟の判決において,最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は平成27年6月8日,「国から労災保険の支給を受けている労働者も対象となる」という初めての判断を示しました。

今回の訴訟は,国から労災保険の支給を受けて休業中だった男性が,勤めていた私立大学から解雇されたのは不当であると訴えたものです。上記最高裁判決は,今後の労働実務にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 

 

 

労働基準法(以下「労基法」といいます。)第19条第1項本文には,「使用者は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間・・・は,解雇してはならない」と規定されています。

 

ただし,使用者が,第81条の規定の規定によって打切補償を支払う場合は,この限りではありません(労基法第19条第1項ただし書)。ここに打切補償とは,労基法第75条の規定によって補償を受けている労働者が,療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合において,使用者が,平均賃金の1200日分の補償を支払えば,その後は同法に規定による補償を行わなくてよいというものです。

 

上記「労基法第75条の規定によって補償を受けている労働者」には,労災保険法に基づいて療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者は含まれないと解されていました。したがって,このような労働者については「打切補償」を支払っても解雇することはできないと解されていました(東京高判平成25年7月10日労判1076号93頁)。

 

 

 

しかし,今回の最高裁の判決によって,「労基法第75条の規定によって補償を受けている労働者」に,労災保険法に基づいて療養補償給付及び休業補償給付を受けている労働者が含まれると解されてしまいますと,今後,使用者が「打切補償」を行って,労働者を解雇できる事案が増えるおそれがあります。

 

その意味においては,上記最高裁判決は,労働者にとっては不利となるおそれのある判決であったといえそうです。

 

 

 

ただし,「打切補償」によって制限が解かれるのは,あくまで,解雇禁止期間制限の例外にすぎません。当然ながら,解雇権濫用(労働契約法16条)の適用は受けます。

 

たとえば,使用者が,労働者の復職する可能性などを無視して解雇するなど,使用者が解雇権の濫用をしたと評価できる場合は,その解雇は無効とされます。

 

したがって,「打切補償」があったからといって,安易に解雇を認めるのではなくて,復職可能性がないのかどうかなど,きちんと判断されることが求められます。

 

今回の最高裁判決でも,解雇権の濫用があったのか否かなどついて,さらに審理が必要であるとして,高裁に差し戻されています。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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