弁護士ブログ

2015.10.19更新

(前編からのつづき)

 

●最低賃金の適用される労働者の範囲

 地域別最低賃金は,産業や職種にかかわりなく,都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます(パートタイマー,アルバイト,臨時,嘱託などの雇用形態や呼称の如何を問わず,すべての労働者に適用されます。)。

 特定最低賃金は,特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に適用されます(18歳未満又は65歳以上の方,雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方,その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。)。

 なお,一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に,最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため,次の労働者については,使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

 ①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方

 ②試の使用期間中の方

 ③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方

 ④軽易な業務に従事する方

 ⑤断続的労働に従事する方

 なお,最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者は,最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し,所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出してください。

 

●派遣労働者への適用

 派遣労働者には,派遣先の最低賃金が適用されますので,派遣労働者又は派遣元の使用者は,派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。

 

●最低賃金の対象となる賃金

 最低賃金の対象となる賃金は,毎月支払われる基本的な賃金です。

 具体的には,実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

 ①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

 ②1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

 ③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)

 ④所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)

 ⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち,通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)

 ⑥精皆勤手当,通勤手当及び家族手当

 

●最低賃金額以上かどうかを確認する方法

 支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには,最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較します。

 ①時間給制の場合

 時間給≧最低賃金額(時間額)

 ②日給制の場合

 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 ただし,日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には,

 日給≧最低賃金額(日額)

 ③月給制の場合

 月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

 ④出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

 出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を,当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し,最低賃金額(時間額)と比較します。

 ⑤上記①,②,③,④の組合せの場合

 例えば,基本給が日給制で,各手当(職務手当など)が月給制などの場合は,それぞれ上記②,③の式により時間額に換算し,それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.10.19更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 今年も最低賃金が改定される時期となりました。ちなみに,東京都の地域別最低賃金は,「時間額907円」となり,効力発生日は平成27年10月1日となっております。

 今回は,「最低賃金制度」について解説したいと思います。

 

●最低賃金制度とは?

 最低賃金制度とは,最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め,使用者は,その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。

 かりに,最低賃金額より低い賃金を労働者・使用者双方の合意の上で定めても,それは法律によって無効とされ,最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。

 したがって,最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には,最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。また,地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には,最低賃金法に罰則(50万円以下の罰金)が定められ,特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には,労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。

 【参考条文】

 最低賃金法第4条第1項

 使用者は,最低賃金の適用を受ける労働者に対し,その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

 同法同条第2項

 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものは,その部分については無効とする。この場合において,無効となった部分は,最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

 

 労働基準法第24条第1項

 賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。ただし,法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては,通貨以外のもので支払い,また,法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては,賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

●最低賃金の種類

 最低賃金には,地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。

 ① 地域別最低賃金

 地域別最低賃金は,産業や職種にかかわりなく,都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として,各都道府県に1つずつ,全部で47件の最低賃金が定められています。

 なお,地域別最低賃金は,[ア] 労働者の生計費,[イ] 労働者の賃金,[ウ] 通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており,労働者の生計費を考慮するに当たっては,労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう,生活保護に係る施策との整合性に配慮することとされています。

 ②特定最低賃金

 特定最低賃金は,特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て,同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について設定されています。全国で242件(平成25年4月12日現在)の最低賃金が定められています。この242件のうち,241件は各都道府県内の特定の産業について決定されており,1件は全国単位で決められています(全国非金属鉱業最低賃金)。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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