弁護士ブログ

2017.02.09更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

私事ですが,昨日(平成29年2月8日)放送されたテレビ朝日の番組『マツコ&有吉の怒り新党』に弁護士としてのコメントがオンエアされました。視聴していた方々からはご連絡をいただきました。

さて,当職らの事務を担当している事務職員が「●月▲日,有給を取りたいのですがよろしいでしょうか」とお願いしてきました。当職は「もちろん大丈夫よ」と回答しました。理由もとくに聴きません。
ところが,企業の中には,労働者が年次有給休暇を取ろうとする際,理由を述べさせるような企業もあるように聞きます。
そこで,今回は「年次有給休暇」について解説していきます。


●そもそも「年次有給休暇」って何?

 

使用者は,6か月以上継続して勤務し,全労働日の8割以上出勤した労働者には,少なくとも10日間の有給休暇を与えなければなりません。年次有給休暇を取る権利は,法律上当然に生じるもので,労働者の請求や使用者の承諾によって生じるものではありません(林野庁白石営林署事件・最判昭和48年3月2日民集27巻2号191頁)。
年次有給休暇を付与しなければならない日数は,勤務年数に応じて,最高20日まで加算されます。労働基準法は,あくまでも最低の基準を定めたものですから,これを上回る日数の年次有給休暇を与えることは,もちろん構いません。
また,年次有給休暇を取得しても,その間の賃金は支払われます(有給休暇といわれる所以です。)。


●「年次有給休暇」は労働者の自由!


年次有給休暇をいつ取るか,また,それをどのように利用するかは,労働者の自由です。会社は,休暇の理由によって,休暇を与えたり与えなかったりすることはできません(前掲林野庁白石営林署事件)。
ただし,例えば,一度に多数の労働者が同じ時期に休暇を取るなどすれば,事業の正常な運営が妨げられることも考えられます。そこで,事業に支障が出るときに限り,使用者は,年次有給休暇を他の日に振り替えることができます(これを「時季変更権」といいます。)。
ただ,そうは言っても,使用者が休暇取得日を一方的に指定できるということではありません。単にボールが労働者に投げ返されただけのことで,労働者があらためて休暇取得日を指定することになります。
事業に支障が出るときというのは,客観的にみて,そのときに休まれたら企業が正常に運営できないという具体的な事情があるときで,裁判例では,会社の規模,年次有給休暇を請求した人の職場での配置,その人の担当する作業の内容・性質,作業の繁閑,代わりの者を配置することの難易,同じ時季に休む人の人数等の様々な事情を総合的に考慮して,合理的に決定すべきであるとされています(東亜紡績事件・大阪地判昭和33年4月10日判時149号23頁,判タ80号91頁)。
また,最高裁判例によれば,労働者が指定した時季に休暇が取れるように状況に応じた配慮をする義務が使用者にはあるとされています(弘前電報電話局事件・最判昭和62年7月10日民集41巻5号1229頁ほか)。
したがって,ただ忙しいからというだけで,年次有給休暇の取得を拒否することはできません。


●使用者と労働者の対応如何?


年次有給休暇は,労働基準法により労働者の権利として守られています。使用者には,前述のとおり,時季変更権が認められてはいますが,「できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすること」を使用者は求められており(前掲弘前電報電話局事件),実際には,変更権を行使できるケースは限定されています。この点を踏まえた上で,使用者とよく話し合い,理解を求めましょう。


●不利益取扱いの禁止


使用者が,年次有給休暇の取得を理由に,労働者に対して不利益な取扱いをすることは,労働基準法によって禁止されています。
ここでいう「不利益な取扱い」には,精皆勤手当や賞与の減額,欠勤扱いとすることによる不利な人事考課などのほか,年休の取得を抑制するようなすべての不利益な取扱いが含まれます(沼津交通事件・最二小判平成5年6月25日民集47巻6号4585頁など参照)。
なお,この事件では,タクシー運転手につき,年休取得日を皆勤手当の算定基礎である出勤日から除外する措置が問題となったのですが,月給に占める皆勤手当の割合が最大でも1.85%にとどまることなどから,年休取得を事実上抑止する力は大きなものではないとして,望ましくはないが,無効とまではいえないと判示されています。)。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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