弁護士ブログ

2017.01.18更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

先日とあるテレビ局の取材を受ける機会がありました。当職も毎週視聴している人気番組ですので,名前がクレジットされるといいなと思っています。取材を受けた内容に関連する事項について今回は解説してみたいと思います。

インターネットを利用している場合,ツイッターやフェイスブック,YouTubeなどでいろいろな写真や動画を投稿したり,他人の投稿内容を見たりして楽しむことが多くなっています。
しかし,このようなSNSサイトや動画サイトでは,自分やそのご家族のお顔が写った写真や動画が勝手に投稿されてしまうことがあり得ます。
インターネット上で自分の画像が勝手に利用された場合,肖像権の侵害が問題になり得ますが,そもそも肖像権とは具体的にどのような権利で,その侵害はどのような場合に認められるのでしょうか?肖像権侵害を受けた場合の対処方法も知っておく必要があります。
そこで今回は,インターネット上の画像投稿で問題になりがちな肖像権の問題について解説してみます。


●肖像権とは?

 

インターネット上で自分が写っている画像や動画を勝手に投稿された場合,肖像権侵害が問題になり得ます。
「肖像権」とは,「みだりに自己の容ぼう等を撮影され,これを公表されない権利」(最大判昭和44年12月24刑集23巻12号1625頁参照)のことです。著作権などと異なり,法文による明文化はされておらず,最高裁判例によって確立されてきた権利です。
肖像権の根拠は日本国憲法第13条後段の幸福追求権にあるとされています。
肖像権というと,有名人にのみ認められるようなイメージもあるかもしれませんが,そのようなことはなく一般人にも認められます。このことは,最高裁の判例などでも明らかにされています(最判平成17年11月10日民集第59巻9号2428頁,これはいわゆる「和歌山毒入りカレー事件」の被告人について問題となった事件でした。)。
なお,有名人には,それとは別に財産的権利である「パブリシティ権」という権利も認められます。
一般人にも認められる肖像権には財産的な性質はなく,単純に「勝手に自分の写真を撮影されたり公表されたりしない」という人格的利益です。


●プライバシー権侵害と肖像権

 

肖像権は,プライバシー権侵害ととても似た性質をもっています。
プライバシー権とは,みだりに私生活に関する事実を公開されない権利であり,たとえば,生い立ちや家族構成,今の生活様式や場所,勤務先や交際相手などの情報がプライバシー権によって保護されます。
また,自分の容ぼうもプライバシー権の保護の対象となり得ます。そこで,自分の写真を勝手に公開された場合,肖像権だけではなくプライバシー権侵害も問題になり,この場合にはプライバシー権と肖像権は同じ内容となります。
ただ,プライバシー権の場合,情報が他人に知られる状況にならないと侵害にならないので,たとえば勝手に他人の写真に自分の姿が写り込んだだけのケースなどでは,プライバシー権侵害にならない可能性があります。
これに対し,肖像権が問題となるのは,写真を撮影されたり公開されたりした場合なので,勝手に撮影されて偶然自分の姿が写り込んでしまった場合などでも肖像権侵害になります。
また,肖像権は,自分の容ぼうを撮影された場合のみに問題となりますので,文書などによって個人的な情報や私生活を公表された場合などには肖像権による保護は及ばず,プライバシー権の適用を問題にする必要があります。
以上のとおり,プライバシー権と肖像権はとても似た権利であり,適用場面が重なることも多いのですが,細かく見ていくと適用場面が異なることもありますので,別個独立の権利として認める必要があります。

 


●肖像権侵害になる場合の基準

 


インターネット上で自分の写真が勝手に利用された場合など,肖像権侵害が成立するにはどのような基準で判断されるのかが問題となります。
肖像権侵害があるかどうかについては,基本的に,その撮影や公開が被写体の受忍限度を超えるかどうかによって判断されますが,受忍限度を超えるかどうかの判断に際しては,以下のような事情が考慮されます。
• 撮影対象の人物をはっきり特定できるかどうか
• 被写体がメインになっているかどうか
• 拡散可能性が高い場所に公開されたかどうか
• 撮影対象の人物をはっきり特定できるかどうか
写っている人がはっきり特定できる場合には,肖像権侵害が認められる可能性が高くなり得ます。反対に,ぼんやりしていて顔などがよく分からない場合には,肖像権侵害にはなりません。
• 被写体がメインになっているかどうか
写真の中で,人物がメインになっている場合には肖像権侵害が認められやすくなります。これに対し,風景などがメインになっている場合には肖像権侵害にはなりにくいです。
• 拡散可能性が高い場所に公開されたかどうか
たとえばネット上のSNSなどでは,拡散可能性が高いので肖像権侵害が認められやすいです。これに対し,公開せずに自分一人や限られた少人数で共有するにすぎない場合には,肖像権侵害が認められにくいです。
また,肖像権侵害が起こるのは,被写体の承諾がないからであり,権利者である被写体が撮影や公開について許可をしている場合には,肖像権侵害になりません。
かかる撮影と公開については別個の承諾が必要になるので,撮影の承諾をしていても,公開の承諾がない限り,勝手に公開したら肖像権侵害になることにも注意が必要です。


●SNSで肖像権侵害が行われるケース


それでは,SNSで肖像権侵害が行われる具体的なケースをご紹介します。
【ケース①】自分と子どもの写真が勝手にSNSに投稿された
たとえば,子どもと一緒にお出かけをしていたとき,外出先で写真を撮影していた人が勝手に自分たち親子の写真を撮って,SNSに公開することなどがあります。この場合,自分と子どもの両方の肖像権侵害となります。
【ケース②】友人が自分の顔写真をフェイスブックに投稿した
フェイスブックでも問題は起こります。友人が自分の顔写真を許可なくフェイスブックに投稿したケースでも,肖像権侵害となります。
肖像権は,勝手に撮影されない権利であるだけではなく,勝手に公表されない権利も含むので,友人に対して撮影の許可をしていても,公表の許可をしていない限りはSNSへの写真投稿が違法になるからです。
【ケース③】知り合いが秘密の画像を勝手に公開した
誰でも,人には見られたくない秘密の画像があるものです。昔の高校時代の写真や水着の写真,写りが悪い写真など,いろいろな事情があるでしょう。
このような画像を,ふとしたきっかけで他人が取得して勝手に公開してしまうことがあります。元恋人などが,嫌がらせで性的な写真を公開するケースもありますし,今の恋人が悪気なしに性的な写真を公開することもあるかもしれません。
このようなケースでは肖像権侵害と認められるので,相手に対して法的な手続きをとることができます。


●肖像権侵害を受けた場合の対処方法


肖像権侵害を受けたら,具体的にどのような対処が可能になるのでしょうか?

まずは,画像や動画の利用差止め請求ができます。肖像権侵害によって画像などが公開されている場合,放っておきますとどんどん拡散してしまうので,一刻も早く公開を止めさせる必要があります。そこで,肖像権にもとづく差止め請求をすることによって,画像や動画の削除を求めることが可能です。

つぎに,損害賠償請求も可能です。肖像権侵害によってこちらは精神的な苦痛を被ることになりますから,その賠償として慰謝料請求をすることができるのです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.10.27更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

「ねぇ濵門君。『17条決定』って知ってる?」
本日午後,裁判所の期日から戻ってきた先輩弁護士にそう聴かれました。「17条決定」にいう「17条」が民事調停法上のものであることは知っていましたが,先輩弁護士の取り扱っている事件は地方裁判所管轄の事案です。
そこで,今回は「17条決定」について解説します。


●「17条決定」とは?


民事調停は,原則的に,当事者の話合いによって紛争解決に向けた合意の成立を目指す,という制度です。
ただ,一風変わった制度として,裁判所が解決内容を決定する,というものもあります(民事調停法17条)。これが,「調停に代わる決定」とか「17条決定」と呼ばれる制度です。条文上は職権で行われることと規定されています。

紛争の状況によっては,ある程度まとまりそうになっているのに,お互いに意地になって調停が成立しない,あるいは,会社の稟議,地方公共団体の議会対策など,裁判所の「お墨付き」が欲しい場合もあります。
裁判所の決定であれば,「面子がたもてる」「稟議もとおりやすい」「後から責任追及されない」ということです。
このような場合,裁判所は職権で「調停にかわる決定」,通称「17条決定」をすることがあるのです。

実際の民事調停の場面では,案件内容の専門家が調停委員,専門委員として関与している場合に,調停に変わる決定が活用されることが多いようです。
例えば,建築瑕疵について,建築の専門家が瑕疵の有無,損害の内容・金額を評価,判断する,という形で積極的に関与するという状況です。


●17条決定に対しては異議申立てができる!


調停に代わる決定がなされた場合,何もしませんと,その内容は調停成立と同様に,強制執行可能な状態となります(民事調停法18条5項)。
他方,内容に納得できない場合は,告知後2週間内に異議申立をすることができます(民事調停法18条1項)。
異議申立てがなされますと,「裁判所の決定」は効力を失います(民事調停法18条4項)。
そして,異議申立てに際しては,とくに不服の理由は必要とされていません。
逆に言いいますと,まずは裁判所(調停委員や専門委員)の案をみてからそれを承服するか否かを考えるという様子見的に利用することもできるわけです。
ただし,この決定内容が,その後の訴訟などで資料(証拠)として利用されることはあり得ます。とくに,案件内容の専門家の判断であれば,訴訟などの別の手続でも重視されることが多いです。


●訴訟から調停に手続が移行される場合もある:付調停


民事訴訟において,専門的な調停委員に和解案を出してもらいたい,という場合に「付調停」が有用となる場面があります。「付調停」とは,一般の民事訴訟において,手続を訴訟から調停に変更するという制度のことです。条文上,調停に付すると規定されているので付調停と呼ばれています(民事調停法20条)。
条文上は「職権」とされていますが,実務上は,当事者からの要請により,裁判所が判断する,ということが多そうです。

たとえば,過払金返還請求事件などですが,経営が苦しく,まともな言い分のない消費者金融などについて,弁論期日を2,3回続行し,弁論を終結して判決を「淡々」とする裁判官が多いのですが,ある程度,双方の「本音」を聞き,ある程度歩み寄った17条決定をする裁判官も増えているようです。


付調停の後,「17条決定」の文例としてはつぎのようになります。


当事者の表示  原 告
        被 告
  (注)従前は申立人(原告)とかの表示例もあったようですが,付調停の場合,申立てがありませんので,そのまま「原告」と表記するようです。

 上記当事者間の平成28年(ノ)第○○号○○請求調停事件について,当裁判所は,次のとおり決定する。

6 原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,主文掲記の条項に定めるもののほかに何ら債権債務がないことを相互に確認する。
7 訴訟(○○地方裁判所平成26年(ワ)第○○号)費用は,各自の負担とする。

                    事実及び理由
1 請求の表示
 ⑴ 請求の趣旨

 ⑵ 請求の原因
   別紙記載のとおり

2 本決定をした理由
  当事者双方から聴取した事情を考慮した結果。本件は主文どおりの条項で解決するのが相当であると認め,民事調停法第17条に基づき主文どおり決定する。


●先輩弁護士への回答


冒頭の先輩弁護士への回答としては,「受訴裁判所である地裁が,本件を調停に付したうえで,自庁処理をしようとしているのではないか。処理としては『17条決定』をする予定なのであろう。」ということとなります。


参照条文
[民事訴訟法]
(裁判所等が定める和解条項)
第265条  裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は,当事者の共同の申立てがあるときは,事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
2  前項の申立ては,書面でしなければならない。この場合においては,その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。
3  第一項の規定による和解条項の定めは,口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。
4  当事者は,前項の告知前に限り,第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては,相手方の同意を得ることを要しない。
5  第三項の告知が当事者双方にされたときは,当事者間に和解が調ったものとみなす。

[民事調停法]
(調停に代わる決定)
第17条  裁判所は,調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは,当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き,当事者双方のために衡平に考慮し,一切の事情を見て,職権で,当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で,事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては,金銭の支払,物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。

(異議の申立て)
第18条  前条の決定に対しては,当事者又は利害関係人は,異議の申立てをすることができる。その期間は,当事者が決定の告知を受けた日から二週間とする。
2〜4(略)
5  第一項の期間内に異議の申立てがないときは,前条の決定は,裁判上の和解と同一の効力を有する。

(付調停)
第20条  受訴裁判所は,適当であると認めるときは,職権で,事件を調停に付した上,管轄裁判所に処理させ又は自ら処理することができる。ただし,事件について争点及び証拠の整理が完了した後において,当事者の合意がない場合には,この限りでない。
2〜4(略)

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.09.27更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


 最近のテレビジョン放送のニュース報道を視聴しておりますと,ある犯罪の被疑者の画像や,犯罪・災害等で亡くなられた方の画像が使用される場合,「Facebook」よりというという文言が添えられたうえで,放映されていることが多く見られます。
 この場合,各テレビ局は画像の使用許諾を被疑者や遺族に取ってから使用するのでしょうか?それとも,情報をWebサイトにあげた時点で万人にダウンロードされることは想定の範囲内として扱われてしまうのでしょうか?
 そこで,今回はニュース報道とFacebookの画像使用について説明いたします。

ちなみに,Fasebookの利用規約

2.コンテンツと情報の共有
「公開」の設定を使用してコンテンツまたは情報をすべての人に公開するということは,Facebookを利用していない人を含むあらゆる人がその情報にアクセスして使用でき,投稿した人の名前やプロフィール写真などと関連付けることが可能だということを意味します。


●報道目的の利用は,著作権法上認められている


 Facebook等のSNSの写真を被疑者等の承諾なく利用するという意味においては,写真の著作権の侵害の有無が問題となり得ます。

 SNSの写真の場合,前提として,「その撮影者(著作者)は誰か」という問題があります。この問題は,自撮りの写真であれば本人が著作者であり,別の人が撮影したのであればその別の人が著作者となります。

 そして,著作者が誰であるにせよ,報道機関が,事故の被害者はどういう人なのかということを報道する目的で,SNSの写真を使用(新聞掲載やテレビ放送)したという場合,そのような利用は著作権法41条(時事の事件の報道のための利用)により認められているので,違法であるとはいえません。


【参照条文】 著作権法第41条

(時事の事件の報道のための利用)

第41条  写真,映画,放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には,当該事件を構成し,又は当該事件の過程において見られ,若しくは聞かれる著作物は,報道の目的上正当な範囲内において,複製し,及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。


 ちなみに,ネットが媒体でも,それが報道であれば,著作権法41条により写真の使用が認められます。


 もちろん,著作権法上適法となる使用は必ずしも報道目的に限られません。「報道」のみならず,「批評,研究その他」の目的であれば,著作権法32条に基づく「引用」として,写真の使用が認められる可能性があります。

 

【参照条文】 著作権法第32条

(引用)

第32条  公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

2  国若しくは地方公共団体の機関,独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し,その著作の名義の下に公表する広報資料,調査統計資料,報告書その他これらに類する著作物は,説明の材料として新聞紙,雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし,これを禁止する旨の表示がある場合は,この限りでない。


 よって,例えば,まとめサイトの場合も,誰かに関する記事をまとめたうえでコメントや分析がなされているようなものであれば,その人の写真を貼ったとしてもそれは,広い意味では「批評」や「研究」を目的とした「引用」として認められるケースもあり得るでしょう。
 他方,2ちゃんねるなどの掲示板に,何のコメントも付けずに,亡くなった人の写真をただ貼り付けたような場合は,「報道,批評,研究その他」に該当する余地がないため,正当な「引用」には該当せず,著作権法上違法であるということになると思います。


●亡くなられた方の画像が使用される場合,遺族の「敬愛追慕の情」が侵害されたかどうかがポイント


 以上の場合とは異なり,犯罪・災害等で亡くなられた方の画像が使用される場合,亡くなったご本人が,自分のSNSの写真を報道写真などに使われることを想定しているとは考えがたいのではないかという疑問は,そのとおりであると思います。
 そのような観点から,亡くなったご本人の権利(たとえば肖像権やプライバシー権)を侵害するのではないかと考える方がいるかもしれません。
 しかし,ご本人は亡くなっているため,法律上はもはや,権利の主体となることができません。よって,亡くなったご本人自身の権利の侵害は問題とはならないのです。

 問題となるのは,遺族の権利です。
 亡くなった人のメディアでの扱われ方によっては,遺族の方の「故人に対する敬愛追慕の情」が侵害されたとして,遺族の方々の損害賠償請求が認められることがあり得ます。
 たとえば,報道機関が,亡くなった方の容貌を報じるためにSNSの写真を新聞に掲載したり,テレビニュースで放送したりしたような場合,通常,亡くなった方を貶めるものとはいえませんので,敬愛追慕の情の侵害があったとはいえないでしょう。
 他方で,インターネットの掲示板やまとめサイトなどで,亡くなった人の写真を掲載したうえで,たとえば「かわいい」「かわいくない」「イケメンだ」「キモイ」等と容貌をあげつらうような採り上げ方がなされている場合には,遺族の方々の心がとても傷つくということがあり得るでしょう。
 そのような場合には,遺族の方々の「故人に対する敬愛追慕の情」の侵害が認められる可能性があると思います。
 もっとも,掲示板やまとめサイトの場合,その実行者が誰であるかを突き止めるのが難しいという実際上・事実上の問題はあることはご承知おきください。

 

■筆者について知りたい方はこちら(弁護士濵門俊也)

■初めて弁護士に相談される方へ

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.07.28更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


 先週7月22日(金),わが国でも配信が開始された「ポケモンGO」。当職はポケモン世代ではなく,「ウルトラ怪獣」のほうが詳しい世代です(どうでもいい話ですが,いまだに500体以上の怪獣データが頭にあります。)が,早速アプリをダウンロードし,最初のチュートリアルで「ピカチュウ」をゲットしました(当職に内緒で先行してプレイしていた妻にうらやましがられました。)。
 ニュース報道によりますと,この「ポケモンGO」をめぐって,各地でトラブルが相次いでいるようです。プレーしながら自動車や原動機付自転車を運転していた人が検挙されるケースや,デマとみられる情報が流れて,大勢の人が深夜の公園に殺到したケースがありました。また,立ち入り禁止の区域に入ってしまう人らも続出しているようです。
 上記各ケースには,法律上の問題点も含まれているので,今回はその点を少し解説してみます。

 

●自転車を運転しながらプレーすると道路交通法違反!

 

 東京都練馬区では,プレーしながら自転車に乗っていた男子大学生が別の自転車と接触するという事故が起きました。そもそも,プレーしながら自転車を運転する行為は,法律論以前に極めて危険な行為です。そして,「ポケモンGO」をしながら運転する行為は,運転中の携帯電話使用に当たり,道路交通法違反に該当する行為です。
 自転車の場合,即罰金ということにはならないですが,注意を受け,2回以上通続けて摘発されると安全講習を受講することになります(昨年の道路交通法改正)。
これに対し,自動車の場合はさらに重い罰則があります。法律上は懲役刑まで規定されていますが,通常は9000円の反則金を支払うこととなっています。

 

●立ち入り禁止区域に侵入すると建造物侵入に当たることも

 

 ニュース報道によると,ポケモンを求めて,立ち入り禁止の区域や他人の敷地内に入るケースも発生しているようです。他人の家の中や敷地内に家人の承諾なく入る行為は住居侵入罪や建造物侵入罪に該当することがあります。ポケモンゲットのために,上記のような行為に及べばとんでもないこととなってしまうことを肝に銘じてください。

 

●デマを流す行為は法律上問題があるか?


 名古屋では,レアなポケモンが出たとの情報が出回り,深夜であるにもかかわらず,愛知県名古屋市昭和区に所在する鶴舞公園に大量に人が押し寄せたことは報道のとおりです。現代社会においては,SNSが普及しており,デマなんて流せばただちに拡大します。
 デマを流すことそれ自体が,ただちに法律に違反するわけではありません。ただし,デマによって他人の仕事を妨害するような事態になってしまったような場合,偽計業務妨害罪等に問われてしまう可能性があります。たとえば,特定の店舗や施設に「レアなポケモンが出た!」などとSNSで発信して,その施設に大量に人が押し寄せた結果,業務に支障をきたしたような場合が考えられます。
 

 本日(平成28年7月28日),関東もついに梅雨が明けました。いよいよ本格的な夏の到来。世間的には楽しい夏休みも迎えます(ちなみに,当職には夏休みはありません。)。いずれにせよ,その他の法的な問題が発生する可能性がありますので,常識の範囲で楽しく遊んでほしいと思います(どうでもいい話ですが,電池の減り方が尋常ではない点は辟易しますね。)。

 

■筆者について知りたい方はこちら(弁護士濵門俊也)

■初めて弁護士に相談される方へ

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.05.25更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 本日ある不動産事件に関し,契約書を起案しておりましたところ,別紙として「物件目録」を添付することとなりました。不動産がからむ事案においては,「物件目録」の起案は必須ですが,いざ起案しようとしますとどう書けばよかったかなと迷うこともなくはありません。

 そこで,今回は,(当職の備忘録を兼ねて)「物件目録」の書き方を説明いたします。

 

第1 不動産の表示

 不動産がからむ事案の対象である不動産の表示の程度としては,対象不動産を特定して認識できる程度であることを要します。不動産登記事項証明書の表示のとおりに記載するようにすれば間違いありません。

1 土地の場合:「所在」,「地番」,「地目」,「地積」

2 建物(区分建物を除く)の場合:「所在」,「家屋番号」,「種類」,「構造」,「床面積」

 ※  附属建物の表示がある場合:「符号」,「種類」,「構造」,「床面積」

3  区分建物の場合

ア  一棟の建物の表示

      「家屋番号」,「建物の名称(建物の番号)」,「種類」,「構造」,「床面積」

イ 専有部分の建物の表示

      「家屋番号」,「建物の名称」,「種類」,「構造」,「床面積」

ウ 敷地権の目的たる土地の表示

      「土地の符号」,「所在及び地番」,「地目」,「地積」

エ 敷地権の表示

      「土地の符号」,「敷地権の種類」,「敷地権の割合」

※ 「建物の名称(建物の番号)」があるときはその旨記載します。その場合は「種類」「構造」「床面積」の記載は不要となります。

 

第2 所有者が複数の場合や物件ごとに所有者が異なる場合

各物件の末尾に所有者の情報(名前・持分等)を記載します。

「所有者  ○○○○」

「共有者  ○○○○  持分○○分の○

 共有者  ○○××  持分○○分の○」

 

第3 記載例

1 土地及び建物(土地所有者○○○○,建物所有者○○○○及び○○××共有)

  1 所在  ○○区○○町○丁目
    地番  ○番○
    地目  宅地
    地積   ○○○○.○○平方メートル
    所有者  ○○○○
  2 所在  ○○▲丁目○番地
    家屋番号  ○○番○
    種類  居宅
    構造  鉄骨造2階建
    床面積 1階  ○○.○○平方メートル
          2階  ○○.○○平方メートル

    共有者  ○○○○  持分○○分の○

    共有者  ○○××  持分○○分の○

2 土地及び区分建物(敷地権の登記なし・土地及び区分建物所有者○○○○)

  1 所在  ○○▲丁目○番
    地番  ○番○
    地目  宅地
    地積  ○○○○.○○平方メートル
       共有者  ○○○○  持分  ○○○○○分の○○○
(一棟の建物の表示)
   2 所在  ○○▲丁目○番地○
     構造  鉄骨造一部鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根11階建
     床面積  1階  ○○○.○○平方メートル
              2階ないし11階  各○○○.○○平方メートル
(専有部分の建物の表示)
   3 家屋番号  ○○▲丁目○番○の○
     建物の名称  ○○○号
     種類  居宅
     構造  鉄骨造1階建
     床面積  ○階部分○○.○○平方メートル


3 区分建物(敷地権の登記あり・区分建物所有者○○○○及び○○××共有)

(一棟の建物の表示)
  所在  ○○▲丁目○番地○
  建物の名称  ○○○○マンション
(専有部分の建物の表示)
  家屋番号  ○○▲丁目○番○の○
  建物の名称  ○○○号
  種類   居宅
  構造   鉄骨造1階建
  床面積  ○階部分○○.○○平方メートル
(敷地権の目的たる土地の表示)
  土地の符号  1
  所在及び地番  ○○▲丁目○番○
  地目  宅地
  地積  ○○○.○○平方メートル
(敷地権の表示)
  土地の符号  1
  敷地権の種類  所有権
  敷地権の割合  ○○○○○分の○○○
      共有者  ○○○○  持分○○分の○
      共有者  ○○××  持分○○分の○

 

筆者について知りたい方はこちら(弁護士濵門俊也)

■初めて弁護士に相談される方へ

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.04.14更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 先日平成28年4月11日付け日本経済新聞(夕刊)に画期的な判決が東京地裁で下されていたという報道に接しました(判決日は,平成28年3月25日付けであり,被告が控訴しなかったため,同年4月8日確定しています。)。

 

【事案】

 通販大手アマゾンジャパン(東京都目黒区,以下「アマゾン」といいます。)のサイトに投稿された書評によって社会的評価が低下したとして,本の著者側(東京都内のNPO法人)が同社に対し,投稿者の発信者情報の開示を求めた事案

 

【本判決の内容】

 アマゾンに対し,投稿者のIPアドレスのほか,氏名や住所,メールアドレスの開示を命じるというもの

 

【本判決の画期的な点】

 まず手続面ですが,アマゾン側は訴訟において日本法人のアマゾンジャパンがサイトを運営していることを認めています。海外に本拠を置くネットサービス企業が本国法人以外がサイトを運営していることを認めることは珍しいのです。ただ,これにより,日本国内で訴訟を提起しやすくなりました

 つぎに実体面ですが,通常,匿名である投稿者を特定するには,被害者側がサイト運営会社に対し,IPアドレス(ネット上の住所のようなものです。)開示を求める仮処分を申し立てます。被害者側は,裁判所の命令に基づいてIPアドレスの開示を受けたあと,さらに,プロバイダに対して,IPアドレスの契約者の氏名や住所などの情報を開示するよう求めることとなります。

 このように「2段階」の手続が必要だったため,中傷を書き込まれた被害者側にとって,発信者を特定するに当たって期間と費用がかさんでいました。

 本判決は,サイト運営会社に対する1回の手続で,IPアドレスだけでなく,氏名や住所,メールアドレスが開示されることとなったわけです。その意味において,本判決は画期的と評価できるのです。

 

【本判決の特殊性】

 どうして本判決のような画期的な判断が下されたのかということを考えるに当たり,開示命令を受けたアマゾンが通販サイトであるという特殊性を無視することはできません。

 すなわち,アマゾンは,氏名やメールアドレスなどを登録してアカウントを作成しなければ書評を投稿できない仕組みを取っています。アマゾンは,単にIPアドレスを保有しているだけでなく,通販サイトという特殊性から,アカウント情報として一定の正確性を期待できるユーザー情報(氏名,住所,メールアドレス)も保有しているわけです。

 

【本判決の及ぼす影響】

 本判決によって,少なくとも,アマゾンに関しては1度の手続において権利救済の可能性が認められたこととなります。アマゾンの書評欄が荒らされ,傷つけられるという人が増えているなかで,迅速な被害救済につながることは間違いありません。

 

■筆者について知りたい方はこちら(弁護士濵門俊也)

■初めて弁護士に相談される方へ

投稿者: 弁護士濵門俊也

2016.04.01更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 本日は平成28年4月1日(金)。東京では桜が満開です。今日から新社会人となった方も多くいらっしゃると思います。本当におめでとうございます。当事務所もフレッシュな新事務員を迎えております。世間の荒波をものともせず,意気軒昂でいきましょう。

 

 さて,よく「早生まれ」といわれますが,わが国の現行制度では4月2日~翌年4月1日生まれの子どもたちが同学年となります。その意味において,4月1日生まれの方は「究極の早生まれ」となります(当職は,すぐに桑田真澄さんが浮かびます。)。

 それでは,なぜ4月1日生まれの方が「早生まれ」なのでしょうか。これには理由があります。今日はエイプリルフールですが,この記事にはうそはありませんので,ご安心ください。

 

 まず,その根拠は,「年齢計算ニ関スル法律」(明治35年12月2日法律第50号)の第1条です。同法第1条は,「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定しています。また,同法第2条は,「民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス」と規定しており,その起算日に応当する日の前日に満了することとされています。

 わが国では,明治以降,年齢の考え方を「数え年」(生まれた時を1歳とし,以降1月1日を迎えた時に1歳を追加する数え方)から,「満年齢」(生まれた時を0歳とし,以降,翌年の誕生日前日の終了をもって1歳を追加する数え方)に変更しました。

 満年齢の考え方によりますと,出生の日である誕生日から起算し,1年が満了すれば,1歳が追加されることとなります。そのため,4月1日が誕生日の方はその前日である3月31日午後12時(24時)に歳を取るわけです。

 ちなみに,この数え方によりますと,本年のような閏年の「2月29日生まれの人」は,通常年であっても,閏年であっても,「2月28日に歳を取る」こととなります。

 

 そして,学校教育法施行規則第59条には,「小学校の学年は,4月1日に始まり,翌年3月31日に終わる」と規定されていまして,さらに小学校の入学資格について学校教育法第17条第1項はつぎのように規定しています。

 「保護者は,子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満12歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。」

 これにより,4月1日生まれの方は3月31日に満6歳に達するため,4月1日生まれの方までは小学1年生になれるわけですが,4月2日以降に生まれますと入学は翌年となるのです。

 

【参考条文】

年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)

1 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

2 民法第143条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

3 明治6年第36号布告ハ之ヲ廃止ス

 

民法第143条(暦による期間の計算)

1 週,月又は年によって期間を定めたときは,その期間は,暦に従って計算する。

2 週,月又は年の初めから期間を起算しないときは,その期間は,最後の週,月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし,月又は年によって期間を定めた場合において,最後の月に応当する日がないときは,その月の末日に満了する。

■筆者について知りたい方はこちら(弁護士濵門俊也)

■初めて弁護士に相談される方へ

 

投稿者: 弁護士濵門俊也

2015.12.17更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

 昨日のブログでも紹介いたしましたが,夫婦別姓を認めていない民法750条について,最高裁大法廷は昨日平成27年12月16日,「夫婦同姓の制度は我が国の社会に定着してきたもので,家族の呼称として意義があり,その呼称を一つにするのは合理性がある」などとして,憲法に違反しないという判断を初めて示しました。15人の裁判官のうち10人が「合憲」としましたが,その一方で,女性裁判官3人を含む5人が「違憲」という意見(この少数意見のことを「反対意見」といいます。)を表明しました。

 最高裁は同日夜,ウェブサイトで判決文を公開しました(ちなみに,最高裁の判決文は,ウェブサイトで誰でも見ることができます。)。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf

 

 今回は,最高裁判決における「意見」について,説明してみます。

 

●各裁判官の「意見」が表示されるのは,最高裁の判断だけ

 三審制を採用しているわが国における判決等の裁判は,地方裁判所,高等裁判所,最高裁判所など,それぞれの審級における裁判があります。

 しかし,最高裁判所における裁判のみが,他の審級の裁判所の場合と違って各裁判官の「意見」が表示され,他の裁判は,合議体(複数の裁判官で構成される裁判所のことです。)の場合に,かりに各裁判官間で意見が分かれたとしても,裁判においてはそのような意見の違いは表示されることはなく,結論しか表示されません。裁判所法11条は,最高裁について「裁判書には,各裁判官の意見を表示しなければならない」と規定し,他方,最高裁判所以外の場合には,合議体の裁判における評議の内容・各裁判官の意見については,秘密を保持することを要求しています(裁判所法75条2項後段)。このような評議の秘密の規定を設けた趣旨は,裁判官間における自由な意見の確保や裁判の権威を守るため等の点があげられます。

 よって,最高裁以外の裁判においては法廷の意見とならなかった個人的見解などは公表されないわけです。

 

●最高裁判所だけが異なる趣旨は?

 では,どうして最高裁判所だけ取り扱いが異なるのでしょうか。

 英米ではむしろ個々の裁判官が裁判の理由を述べるのが原則とされており,戦後米国の影響を受けて改正されたわが国の裁判制度も,最高裁判所だけは英米のそれにならって個別意見の表示を取り入れたとされています。そして,最高裁で意見を表示する趣旨は,衆議院議員総選挙の際に行われる最高裁判所裁判官の国民審査の資料とする点にあるとされているのです。

 

●各裁判官の「意見」の内容

 多数意見・法廷意見と同じ結論に至った少数意見として,さらに「補足意見」と「意見」とが示される場合があります。

 「補足意見」は,多数意見の理由・論理の補足の説明です。多数意見が,どうして,そのような判断となっているのかという理解が深まります。

 「意見」は,多数意見が採用した理由・論理とは異なる理由・論理を採りながらも,結論は多数意見と同じとなったものです。本件とは異なる事案において,考え方の参考となります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

まずは初回無料相談をご利用ください。
inq_tel.png
弁護士濵門俊也 無料相談してみる