弁護士ブログ

2019.05.23更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


昨日,元アイドルグループのメンバーと女優の二人(内縁関係にあるとされています。)が大麻取締法違反の罪で逮捕されたというニュース報道がありました。大麻取締法違反といいますが,具体的な実行行為は「所持」です。ちなみに報道では当該大麻が「二人の物」か「一人の物」がで共犯者供述が食い違っているとされています。しかし,「所持」罪について所有の意思,所有権の有無は問われません(覚せい剤の所持について,東京高判昭和50年4月28日高検速報2100参照)。


皆さんもご存じかもしれませんが,大麻の使用は,一般には処罰の対象とはされていません。大麻取扱者が所持の目的以外の目的に大麻を使用した場合に処罰されるだけです(大麻取締法3条2項,同法24条の3)。この場合の法定刑は,5年以下の懲役,営利の場合,7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金です(未遂罪も処罰されます。)。


そもそも,大麻取締法は,大麻草全体を規制対象にはしていません。大麻取締法が規制対象としている大麻とは,大麻草(カンナビス・サティバ・エル…学名)及びその製品をいい,大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く),大麻草の種子及びその製品は除かれます(大麻取締法1条)。すなわち,大麻草の成熟した茎や種子を持っていたとしても「所持」には当たらないのです。


そうしますと,その理由が気になりますよね。そこで今回は,大麻取締法違反が大麻草の成熟した茎や種子を持っていることを「所持」として処罰していない理由や「使用」を処罰していない理由を解説します。


●大麻草の成熟した茎や種子を持っていても「所持」にならない理由:大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないから


理由ですが,「大麻草全体に有害な物質が含まれているというわけではないから」です。大麻は,その成分中のテトラヒドロカンナノビールが中枢神経に作用し,著しい向精神作用を示すのです。このテトラヒドロカンナノビールという成分が,大麻特有の妄想,幻覚,恐怖状態,錯乱状態などを引き起こし,有害性があるとされるのです。また,テトラヒドロカンナノビールは,大麻草の樹液に多く含まれ,大麻草の花や葉っぱにはこの樹液が多く含まれているのに対し,成熟した茎や種子にはテトラヒドロカンナノビール成分はほとんど含まれていないのです。
日本在来種の麻も大麻なのですが,日本では伝統的に茎の部分は麻織物や麻縄に利用され,種子の部分は七味唐辛子に使用されるなどして日常生活に深く染み込んでいます。こうしたことから「成熟した茎や種子の部分は有害性がほとんどない」として規制対象から外されたのです。


●大麻の「使用」を処罰していない理由:罪刑法定主義の要請


「有害性がほとんどない」といいましたが,これは成熟した茎や種子にまったくテトラヒドロカンナノビールが含まれていないというわけではなく,微量なテトラヒドロカンナノビールが含まれていることがあることを意味します。そのため,この茎や種子が体内に入った場合に,尿検査で微量な大麻成分(テトラヒドロカンナノビール)が検出されることが絶対にないとはいえないわけです。
そしてもっと重要なことは,尿として排出された大麻成分が,大麻の茎の部分であったのか,種子の部分であったのか,それとも樹脂(樹液が固まったもの)や花の部分や草の部分であったのか,特定できないことです。すなわち,尿検査で大麻の陽性反応が出たからといって,それが規制対象である大麻の花や葉っぱ,あるいは大麻樹脂といわれるものをその人が摂取したとは必ずしも言えなくなるわけです。
そこで,覚せい剤とは異なり,大麻について,使用罪は処罰範囲から除外されたのです。決して有害性がほとんどないから大目に見て処罰していないわけではありません。刑法の大原則である罪刑法定主義の要請から処罰範囲を限定化・明確化すべく不処罰とされているのです。


【参考文献】 シリーズ捜査実務全書8・藤永幸治編集代表『薬物犯罪』(第2版・東京法令出版)

投稿者: 弁護士濵門俊也

2019.05.20更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 


現在『週プレNEWS』Webコミック配信で絶賛連載中のゆでたまご先生の漫画『キン肉マン』ですが,本日5月20日に発売された週刊プレイボーイ(集英社)2019年6月3日号では,『キン肉マン』の40周年を記念した特集が50ページにわたって展開されています。

 

表紙にはキン肉マンとキン肉マンソルジャー(もちろん「アタル兄さん」のほうです。「真ソル」こと「ソルジャーマン」ではありません。ソルジャーマンのコミュニケーション能力が非常に優れていることは,「ギ…ゲ…ゴ…」の台詞でファンにはよく知られています。「ギ…ゲ…ゴ…」であれだけの情報をテリーマンに伝えたわけですから,凄い能力です。)が登場。誌面には連載中の『キン肉マン』第284話が先行掲載されており,本日Webで公開された第283話の続きを読むことができます。
毎週月曜日の配信を週初めの密かな楽しみにしている私にとって,今日は「肉祭」となりました。週刊プレイボーイならば「女房を質に入れ」なくても買えますので,第283話を読み終わった後,事務所近くの書店に走りました。

 


ネタバレしないように感想を述べたいと思いますが,アリステラの小ボス感が一気に増した点が気になりました。また,アタル兄さんの瞳が美しすぎました。慈悲に溢れています。今回の2話分は嶋田先生の台詞が刺さりましたし,中井先生の作画が綺麗でした。チープな表現ですが,本当に感動しました。今後のリアル``マッスルブラザース``の活躍が気になるところです。

 


先ほど『キン肉マン』連載40周年に触れましたが,たしかに1979年(昭和54年)は令和の時代となった現在にも通じるカルチャーが花開いた年でした。南信長さんの著書『1979年の奇跡 ガンダム,YMO,村上春樹』(文春新書)にも詳しいところです。私もリアルタイムで少年時代をすごしました。GW中,幼馴染みと話した際,『キン肉マン』が現在も連載していることを知らなかったので,教えてあげました。
ちなみに,その幼馴染みと話していると,たまたま「日本人最強のレスラーは誰か?」との話題になりました。私は「ジャンボ鶴田」推しなのですが,その幼馴染みは「武藤敬司」推しでした。ジュニアヘビー級に限れば「初代タイガーマスク(佐山聡)」で争いはありません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2019.04.26更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


今朝クリーニング屋さんにスーツを持って行ったところ,「濵門さんは10連休ですか?」と尋ねられました。私は「カレンダーどおりですかね。」と答えました。
今年のゴールデンウィークは,「平成」から「令和」への改元,今上天皇の退位と新天皇の即位といった重大な節目となりそうです。ただ,「10連休」の理由について深く考えていない日本国民も多くいらっしゃると思います(チコちゃんに叱られそうです。)。
そこで,今回は,「10連休」の謎について解説してみます。


●祝日と休日とは何が違うの?


祝日と休日とでは大きな違いがあります。

祝日に関する法律といえば「国民の祝日に関する法律」(以下「祝日法」といいます。)に祝日についての様々な決まりが規定されています。祝日法第1条には,「国民の祝日」(祝日)とは,「自由と平和を求めてやまない日本国民が,美しい風習を育てつつ,よりよき社会,より豊かな生活を築きあげるために,国民こぞって祝い,感謝し,又は記念する日である。」と定義されています。

この祝日法がさす「休日」には,国民の祝日,振替休日,祝日と祝日に挟まれた日,の3種類が含まれます。これを祝日法に基づく休日といい,同法第3条に規定されています。


祝日法第3条(休日)
1 「国民の祝日」は休日とする。
2 「国民の祝日」が日曜日に当たるときは,その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする。
3 その前日及び翌日が「国民の祝日」である日(「国民の祝日」でない日に限る。)は,休日とする。


●2019年のゴールデンウィーク


ところで,5月1日が祝日か休日かでどう変わるのでしょうか?
もし祝日となりますと,4月29日は「昭和の日」,5月3日は「憲法記念日」という祝日ですから,5月1日が祝日だとしますと祝日法第3条第3項により,祝日と祝日の間に挟まれた4月30日及び5月2日の平日が休日に変わります。

そうすると,4月28日~5月6日までの9日間の大型連休が出現します。土曜日の4月27日も含めると,10日間の超大型連休になります。これが10連休の理由です。

もし5月1日がただの「休日」だとしますと,祝日法第3条第3項は適用されませんので,4月30日及び5月2日は平日のままとなり,「大型飛び石連休」に様変わりです。

さて,実際はどうなのでしょうか。
実は法律があります。2019年は,新天皇が即位する5月1日と「即位礼正殿の儀」が行われる10月22日を「国民の祝日」とすることが法律で定められました。
そうしますと,2019年のゴールデンウィークも,つぎの3種類に分けることができます。


【国民の祝日】4月29日(昭和の日),5月1日(新天皇即位),3日(憲法記念日),4日(みどりの日),5日(子どもの日)

【振替休日】5月6日(5日が日曜のため)

【休日】4月30日,5月2日(祝日と祝日に挟まれた日)


●君は「10連休」を取ることができるか?!


冒頭で「カレンダーどおり」と発言した私は「10連休」となりますが,あなたは「10連休」を取ることができるでしょうか。雇用されている従業員にとって会社に出勤しなくてもよい日,すなわち労働義務がない日というのは,国民の祝日に関する法律に拘束されません。実際は,就業規則や労働契約の規定によって決まるのです。

例えば,就業規則で「休日は土曜日,日曜日,国民の祝日とする。」とだけ規定されているだけであれば,規定を杓子定規に適用すれば,2019年の場合,4月30日や5月2日,6日は,会社所定の休日には該当しないこととなります。

その理由は,たしかに,祝日法によれば,祝日と祝日に挟まれた日なので休日とはなりますが,それは,あくまで法律上は休日となるというだけであり,労働者が勤務している会社の休日は別のルール,つまり就業規則や労働契約で決まるという点にあります。

4月30日や5月2日及び6日は,「土曜日」でもありませんし,「日曜日」でもありません。もちろん,「国民の祝日」でもありません。カレンダーでは赤字になっていても,国民の祝日ではない休日ですから会社所定の休日にならないわけです。

かりに上記の規定のような就業規則とはなっていても,「祝日法に基づく休日」には会社に出勤しない,という慣行が認められるような職場も多いと思います。
このような職場であれば,労働者と使用者側の間において,規則に明確なルールがないものの,長年守られてきた労使慣行のひとつとして,「4月30日や5月2日は会社に出勤する義務のない日である」という主張も成り立ち得ると思います。労使慣行といいますのは,就業規則等で明文化されているものではないものの,労働条件を補完するものです。


●5月1日は亡き妻の祥月命日


最愛の妻を亡くし,1年が経とうとしています。アニメ機動戦士Zガンダムに登場するクワトロ・バジーナ大尉の名言につぎ台詞があります。


「生きている間に,生きている人間のすることがある。それを行うことが,死んだ者への手向けだ。」


先日鑑賞してきた映画『キングダム』(原作ファンも納得の最高の出来栄えでした。あの個性的なキャラクター達を見事に演じられていました。戦闘シーンのアクションもすごかったです。)の冒頭でも信が漂の死を乗り越えて,「天下の大将軍」を目指します。「天下の代将軍」は目指せませんが,大志を抱いて自身の使命を全うしたいと思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2019.02.19更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


本日,最高裁判所第3小法廷(宮崎裕子裁判長)で注目の判決が下されました。
離婚時の精神的苦痛に対する慰謝料を,別れた配偶者の過去の不貞行為の相手方に請求できるかという点が争点となった事件です。

配偶者の不貞行為の相手方に対しては,離婚が成立したかどうかにかかわらず不貞行為の慰謝料を請求できることとされています。しかし,離婚に対する慰謝料を請求できるかについては,実は最高裁の判例がなく,初判断が示される可能性があるとして注目されていました。

結論から申し上げますと,最高裁は,特段の事情がない限り,不貞行為の相手方に対し離婚に伴う慰謝料を請求することはできないと判断しました。

 


●事案の概要と上告までの流れ


原告は関東地方に住む男性です。平成27年に妻と離婚し,その4年前まで妻と不貞交際関係にあった妻の元同僚を相手取り「不貞行為が原因で離婚した」として計約500万円の支払いを求めて提訴した事案です。ちなみに,妻には慰謝料を請求していません。

本件の事案の特殊性としては,原告の男性が元妻の不貞行為を知ってから3年以上経過していたことが挙げられます。民法724条前段は,不法行為に基づく損害賠償請求権は「損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは,時効によって消滅する」と規定しています。このため,訴えられた元不貞行為の相手方側は「時効により請求権が消滅している」と反論しました。

ところが,第一,第二審は,原告の男性の訴えを認め,元不貞行為の相手方側に約200万円の支払いを命じました。第一審判決は「不貞行為の発覚をきっかけに婚姻関係は悪化し,離婚に至った」と認定。離婚慰謝料について,消滅時効の起算点は「離婚の成立時」であるとする最高裁判例(最二小昭和46年7月23日民集25巻5号805頁)を引用し,「不貞行為により離婚を余儀なくされて精神的苦痛を被ったと主張する場合,損害は離婚成立時に初めて分かる」と判示し,慰謝料の支払いを命じたのです。

判決ははっきりとは述べていませんが,「不貞慰謝料」ではなく,「離婚慰謝料」として元不貞行為の相手方に支払いを命じたわけです。平成27年の離婚から3年以内の提訴でしたので,この枠組みであれば消滅時効にはかからないわけです。この判断第二審・東京高裁も支持しました。

この判決を元不貞行為の相手方側は不服とし,最高裁に上告したのです。

本件では,第二審の結論を変更する際に必要な弁論が開かれたことから,元不貞行為の相手方に賠償を命じた原判決が変更される可能性があるとして注目されていました。


●最高裁は,特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないと判断


【最高裁判決の理由,以下引用始め】


夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ,本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。
夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。
第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
以上によれば,夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。


【最高裁判決の理由,以上引用終わり】


当職は,あくまでも離婚に伴う慰謝料請求という性質上,本件の第一,第二審の判断については,違和感しかありませんでした。ですので,法解釈上は最高裁の判断を相当であると考えます。事案の詳細については分かりかねますが,何かしら特殊な事実関係があったのかもしれません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2019.02.06更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかど・としや)です。

  

  先日,当事務所の同僚弁護士から「濵門さんの記事が岡口基一裁判官にツイートされているよ」と教えてもらいました。そこで,岡口基一裁判官のTwitterを見ますと,平野龍一博士の「わが国の刑事裁判はかなり絶望的である」との言葉を引用されておりました。少しうれしくなりました。
  上記平野博士の言葉は「名言シリーズ」と銘打ち,皆さまに広く知ってもらいたいとの思いから書かせていただきました。当職が司法試験受験生の時代には,「はしがき」や「まえがき」に心を熱くする基本書が数多くありました。今回は,「名言シリーズ」の復活版となります。


  「破ったら血が出るような判決を書け」という言葉は,砂川事件第一審判決であるいわゆる「伊達判決」で著名な伊達秋雄裁判官(以下「伊達裁判官」といいます。)の言葉です。松本一郎先生の著作である『事例式演習教室 刑事訴訟法』(初版第1刷1987年12月10日,勁草書房)のまえがき「刑事裁判は絶望的か―まえがきに代えて―」でも紹介されている言葉です(この松本先生のまえがきは,かなり熱いです。一読されることをお勧めします。)。

  いわゆる砂川事件とは,1957年(昭和32年)にアメリカ軍の立川基地拡張に対する反対運動の過程で起きた事件をいいます。 57年7月8日,当時の東京都北多摩郡砂川町(現在の立川市。東京地方裁判所立川支部に向かうバスに乗るたびに思い出す砂川事件です。)において,基地を拡張するための測量に反対するデモ隊の一部が立入禁止の境界柵を破壊して基地内に侵入し,7名が「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法」違反として起訴されました。
  この事件は直接的には一刑事事件にすぎないのですが,前提問題として旧日米安全保障条約の合憲性が法廷で争われた初めてのケースです。
  1959年(昭和34年)3月 30日,東京地方裁判所は,日本に指揮権のない軍隊であっても,わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的で合衆国軍隊の駐留を許容することは,日本国憲法第9条2項前段の禁止する陸海空軍,その他の戦力に該当すると述べたうえ,日米安全保障条約を違憲とし,被告人らを無罪とする判決を下しました (下級刑集1巻3号 776頁) 。これがいわゆる「伊達判決」と呼ばれるものです(前述の松本先生も左陪席で,「伊達判決」に関わっています。)。
  驚いた検察側は,この判決に対し,最高裁判所に跳躍上告をしました。最高裁判所大法廷は,同年 12月 16日,9条2項がその保持を禁止した戦力とは,日本がその主体となってこれに指揮権,管理権を行使し得る戦力であって,合衆国軍隊の駐留はこれに当たらないことなどを理由に,原判決を破棄し,東京地裁に差し戻しました。その後,この事件は差戻し第1審で有罪の判決があり,同第2審で控訴棄却となり,確定したという経緯があります。
  昨年(2018年・平成30年)7月18日,砂川事件の再審請求事件について,最高裁第二小法廷が,平成29年(2017年)11月15日の東京高裁即時抗告棄却決定に対する再審請求人の特別抗告を棄却する決定を下し,再審請求を認めなかったことは記憶に新しいところです。


  砂川事件判決から,本年は60周年。「破ったら血が出るような判決を書け」との覚悟をもって刑事裁判に関わっている裁判官,検察官,弁護人ばかりですといいですね(少なくとも当職はそうありたいと思っています。)。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.09.19更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


女優の綾瀬はるかさんが主演するTBSの連続ドラマ「義母と娘のブルース」(火曜午後10時)の最終回となる第10話が昨日18日に放送されました。麦田(佐藤健さん)の告白の行方から始まり,みゆきちゃん(上白石萌歌さん)の受験等が描かれ,義母と娘の10年間の物語が完結しました。私は,開始早々涙を流し,クライマックスでは涙が止まりませんでした。今クールのドラマの中で一番はまったものの一つです(今クールは,テレビ朝日のナイトドラマ「dele(ディーリー)」やフジテレビの月9ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」など秀作・傑作が数多くありました。)。


ドラマは桜沢鈴さんの同名マンガが原作でした(4コママンガなのですが,ストーリー展開と台詞のセンスが抜群です。宣伝では「ちょっぴり泣ける」とあるのですが,私は号泣しました。)。
一流企業のバリバリのキャリアウーマンの亜希子さんが,8歳の娘をもつ良一(竹野内豊さん)から結婚を申し込まれるところから始まる物語。亜希子さんは,良一の娘・みゆきちゃん(横溝菜帆さん)の母親になろうと,仕事を辞めて家事や育児に奮闘する姿を描いた作品です。
脚本が森下佳子さんであり,綾瀬さんとは過去にもたくさん名作を生み出した最強タッグですから,間違いないと確信し,第1話から楽しみに視聴しておりました。
名言が多かったことも特徴ですね。
何でもそつなくこなす亜希子さんが馬鹿と言われるシーンが2つあります。
一つ目は第6話で麻生祐未さん演じる下山のおばちゃんの台詞です。

 

バカなのかい!キャリアウーマンってのは!
悲しむことだよ!母親はあんたしかいないんだよ!

 

亜希子さんもみゆきちゃんも良一さんの葬儀で涙すら流さないことに違和感を覚えた下山のおばちゃんが亜希子さんを叱責したシーンです。私も本年5月に妻を亡くし,葬儀・告別式等の喪主を務めるましたが,亜希子さんとみゆきちゃんの態度には違和感をもちましたので,「よくぞ言ってくれました」と泣きながら視聴しました。

二つ目は最終回のみゆきちゃんの台詞です。

 

バカなんじゃないの!そういうのは世間では愛っていうんだよ!
やりたいことやってよ,おかあさん!おかあさんがすごいねって言われたら,みゆき自身もすごいねって言われたと思うんだよ!

 

記事を書きながら泣けてきます。10年間,義母と娘が紡いだ「アイノカタチ」の集大成ともいえる台詞です。


「別れなんて来ないほうがいいに決まってる。だけど……別れたからこそ,めぐりあえる人もいる。曲がらなかったはずの曲がり角を曲がると,歩かなかったはずの道がある。そこにはなかったはずの明日がある。その先には出会わなかったはずの小さな奇跡が」


劇中最後のシーンにみゆきちゃんの独白が流れます。「小さな奇跡」を探す行為は「少女パレアナ」の「幸せを探すゲーム(よかった探し)」に通じますし,この独白そのものは「赤毛のアン」のラストシーンを彷彿とさせます。

思いは尽きませんが,本当にいいものを見させていただきました。やはりドラマは脚本と役者ですね。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.08.31更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


昨日,当職が注目していた事件の判決が下されました。
それは,生まれた子どもの父親であることを法的に否定する「嫡出否認」の訴えを起こす権利を,夫のみに認めた民法第774条の規定は男女同権を定めた憲法に反するとして,神戸市の60代女性らが国に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決です。
大阪高裁(江口とし子裁判長)は平成30年8月30日,上記規定は違憲ではないと判断し,一審に続き請求を退けました。


争点は民法第774条の違憲性や,法改正しない国に裁量権の逸脱があるか否かという点です。


昨年11月の第一審・神戸地裁判決は「規定は嫡出否認の要件を厳格に制限し,婚姻中の夫婦に生まれた子の身分を早期に安定させる目的で合理性がある」と指摘していました。また,現行制度を合理的と是認した平成26年の最高裁判決も踏まえ,憲法違反には当たらないと判断し,請求を棄却しました。大阪高裁は判決理由において,嫡出否認の訴えを夫にだけ認めているのは「夫は父子関係の当事者で,子の扶養義務を負うなどの法的な権利義務の関係が生じる」からであり,妻は妊娠の時期や相手を選んで生物学上の父子関係を管理できるのに対し,夫はそれができないと指摘し,規定には合理性があり,違憲ではないとしたのです。
また,妻や子にも訴えを認めるかどうかは「社会状況を踏まえた国会の立法裁量に委ねられる」とし,裁量権の逸脱はないとしました。


原告は60代女性のほか,30代の娘と8歳及び4歳の孫2名の計4名です。
原告の60代女性は昭和57年,当時の夫の暴力を理由に別居。その後,夫との離婚が成立する前に別の男性との間に娘が生まれ,男性を父とする出生届を提出しました。しかし,「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」との民法第772条第1項の「嫡出推定」の規定を理由に,男性との間の子だとする出生届は受理されず,民法上は夫しか嫡出否認の訴えを提起できませんので,娘は無戸籍となりました。さらに娘が産んだ孫2人も無戸籍となったのです。娘は法的に結婚できず,孫には就学通知や健康診断の案内が届かなかったそうです。
原告側は「妻や子も訴えを起こせるよう法改正されれば無戸籍は避けられた」と主張しています。ちなみに,3人の無戸籍は夫の死後,認知調停などを経て平成28年に解消されています。


あらためて,民法772条は,妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定すると規定しています(第1項)。さらに婚姻の成立の日から200日経過後や,婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子も,婚姻中に懐胎したものと推定します(第2項)。
この推定を覆す「嫡出否認」を訴える権利(否認権)は夫にのみ認められ,妻や子には許されていません(民法第774条)。その立法趣旨は,出産の外形的事実から確定できる母子関係と異なり,「父子関係の証明は難しいため」,嫡出推定は子の利益のため法律上の父を明確化し,親子関係を安定させる点にあるとされています。
上記立法趣旨自体は明白に不合理とはいえませんので,法を解釈・適用し,紛争を解決する裁判所としては,なかなか違憲判決を下すことは難しいと思います。しかし,「それでも」と言い続けなければなりません。
当職の個人的意見としては,否認権者の範囲を夫のみに限らず,少なくとも妻,子には認めるべきだと思います。さらに,生物学的な父にも拡大すべきであると考えています。「父子関係の証明は難しい」といいますが,現在のDNA型鑑定の精度からすれば,99.999……%の確率で生物学上の父であることが判明するからです。司法で解決できない問題である以上,立法で解決するほかありません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.03.19更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 

『アンナチュラル』(TBS系)が,3月16日の放送で最終回を迎えてしまいました。本当に「クソおもしろい」ドラマでした。脚本家が野木亜紀子さんでしたので,間違いないとは思っていましたが,今回の脚本はこれまでとは違いオリジナルだったのでどうだろうとも思っていました。しかし,それは杞憂に終わりました。出演者のことば一つひとつに味わいがありましたし,制作スタッフら作り手の方たちの本作に込めた愛情を感じました。最終話の伏線回収の手際のよさには本当に唸りました。快感すら覚えました。「良いものを見せていただき,ありがとうございました」と素直にいいたいです。

 

最終話は,中堂系(井浦新さん)の死んだ恋人・糀谷夕希子(橋本真実さん)を含めた26人の連続殺人事件の帰趨が描かれました。26件全件とはいかないまでも数件は殺人罪で起訴されたと思います(劇中には夕希子の事件の追起訴のシーンが描かれていました。)。
被告人・高瀬(尾上寛之さん)が真犯人だと分かっていながらも殺人を立証できる証拠がなく(高瀬は殺人については否認していました。),中堂が宍戸理一(北村有起哉さん)を襲い無理やり証拠を掴もうと奔走したりもしました。
そんななか,高瀬による26人の殺人事件を立証できる証拠の存在に気付くきっかけを作ったのが,東海林夕子(市川実日子さん)のひと言でした。

 

「ウォーキングできないデッドの国かぁ…」

 

この東海林の呟きから,夕希子の遺体がアメリカで埋葬されており,まだ解剖することができるということに気付きます。亡くなった当時に比べれば,8年後の進化した技術により,新しい手がかりが見つかる可能性が見えました。夕希子の再解剖が実施され,見事,検出されたDNA型が被告人・高瀬と一致しました。裁判員裁判の公判に証人として出廷した三澄ミコト(石原さとみさんが演じました。雨宮美琴がもともとの名前でしたが,「ミコト」となったことによって,「命/御言」という意味のふくらみができたように思います。毎回のミコトの言葉には力がありました。)が,高瀬を挑発し,殺人を自白させるに至った場面は圧巻でした。

 

物語内では,ムードメーカー的な存在を担っている東海林(劇中,一番視聴者に近い立ち位置のキャラクターだったと思います。)にこのような役割をもってくるという,脚本家・野木さんのキャラクターへの愛情深さが見えました。あと個人的には,坂本を演じた飯尾和樹さんもいい味出しているなとみていました(中堂を「スナフキン」と規定した場面でこれまでのムーミン好きの伏線が回収されました。)。

 

そして,何といっても劇中を盛り上げたのは,米津玄師さんの主題歌「Lemon」です。「中堂と有希子の愛のテーマ」と言ってよいでしょう。さっそく発売日前日にCD+DVD版を購入しました(米津さんも若いのに言葉遣いが丁寧かつ繊細です。意味ない言葉をリフレインすることもありませんし,微妙な転調も唸ります。言葉の魔術師という意味で脚本家・野木さんとも相通じるところがあります。)。

 

最終回の最後の場面,「Their journy will continue.」という意味深なメッセージもすでにネット上等で話題になっています。「journey」の「e」がないわけですから「アンナチュラル」です。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.01.17更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


死者6,434名,行方不明 3名,負傷者43,792名という甚大な被害をもたらした阪神・淡路大震災から,本日17日で23年となりました。被災地では追悼式典が行われ,亡くなった人たちに祈りがささげられました。雨が降りしきる兵庫・神戸市中央区の東遊園地では,地震が発生した午前5時46分に合わせて,黙とうがささげられました。当職も犠牲になられた方々を思い,祈りました。


当職は地震発生当日,虫の知らせといいますか,午前5時46分ころ,いきなり目が覚めたことを覚えています。何かただならぬことがあったと直感し,大震災の報に接しました。
23年も経過しますと記憶も風化しがちですが,ありとあらゆる自然災害の危難にさらされている日本国内にいる人は決して忘れてはならないと確信します。

そこで,今回は,阪神・淡路大震災が大災害となってしまった理由等を論じたいと思います。


●甚大な被害は,「自然災害」か「人災」か


阪神・淡路大震災は多くの建物が倒壊し,住宅が密集する長田区では大規模な火災が起きました。亡くなった方の8割は,倒壊した建物の下敷きになったことが原因だったそうです。そして,倒壊した建物の多くは,現在の耐震規定を満たしていない既存不適格建物でした。

燃え上がる黒煙。交通機能は麻痺し,消防車は火災現場まで辿り着けませんでした。ですが,もし,辿り着けたとしても,水が確保できず,満足な消火活動ができなかったといわれています。
火の勢いは増すばかりであり,被害は拡大しつづけました。火災による死者は,400人以上とも,500人以上ともいわれています。

では,一体なぜ,被害が拡大し続けたのでしょうか。


【理由①】 神戸市民が地震に無防備であったこと

阪神地区,中でも「神戸は地震がないところだ」という認識が住民の方々にありました。
神戸には過去,震度6を超える地震が起きたとの記録がなく,安全神話が広がっていたようです。まさに「油断大敵」。もっとも,この感覚は私の故郷・熊本県民にはよく理解できる話です。実際,熊本地震も地震に無防備であったことが被害の拡大をもたらしています。

神戸は戦争中米軍の空爆で被災したため,戦後すぐに建てられた,普請のしっかりしていない建物が多かったと聴きます。また,豪奢な建物といっても,地震に対して脆弱な「木舞」や「葺き土」という建築技法を採用したものが多かったそうです。
「神戸には地震がない」という妄信が,備えに目を向けさせなかったのかもしれません。


【理由②】 大災害の警告を各自治体が黙殺したこと

実は,阪神・淡路大震災前から,地震学者は地震を警告していたといいます。

1972年には,大阪市立大と京大のチームが,「神戸と地震」と題した報告書をまとめ,神戸に都市直下地震が起こるおそれを指摘していました。

自衛隊は,被害を正確に予測し,関西地区の各自治体に協議を提案していました。京阪神地域で震度5~6の地震を想定して,被害状況を推定する調査書を作成していたというのです。
その調査書によりますと,とくに神戸市などは木造家屋の密集している地域が多く,建物の倒壊と火災により兵庫県全体で被災者38万5000人と予測しています。阪神・淡路大震災の被災者数は31万6000人ですから,大災害は正確に予見されていたといえます。
自衛隊は,この調査書をすぐに関西地区の各自治体に直接持ち込み,協議を提案したのですが,黙殺されています。

神戸新聞は,一面トップで「神戸にも直下地震のおそれ」と警告していました。
神戸新聞は1974年,1980年に大きな紙面を割き,かなり力を入れて警告記事を書いていました。1974年の紙面には,危険区域の予想図も掲載されており,予想図は,実際に被災した地区とまったく同じであったといいます。

具体的な危険地区の予想図が発表されたにもかかわらず,予想図はやがて忘れ去られ,耐震化工事を行う者はほとんどいなかったといいます。しかし,結果,予想図のとおり,危険度が高い地域では多くの建物が全壊,もしくは半壊しました。鉄筋コンクリートのビルも,例外ではありませんでした。

ちなみに,東日本大震災においても,地震学界が巨大地震が発生すると警告し,福島原発の安全を審査する委員会でも869年の大震災の再来が考えられるという指摘があったにもかかわらず,政府も責任諸官庁も,福島県も東京電力もそれを無視していたという事実を付しておきます。

●黙殺されていた自衛隊の共同訓練の呼びかけ

多くの自治体は,毎年9月1日の防災の日に自衛隊との共同訓練を行い,日頃から密接な連携を築く努力をしています。

ところが兵庫県は,自衛隊が日頃から共同訓練や連絡調整を呼びかけても,「結構です」と拒否していました。当時の神戸市長(故・宮崎辰雄氏)は,「神戸は地震に強い街ですよ。地盤も花こう岩だし,いざとなったら山へも海へも逃げられる」とインタビューで語っていたそうです。「神戸が地震に強い街」という誤った認識のもと,都市計画を進めたことも大災害の遠因となっているのではないでしょうか。

●兵庫県や神戸市が警告を黙殺したのはなぜか?

「震度6を超える可能性もある」という警告は,「震度6に対応できる費用が無いから」という理由で捻じ曲げられたそうです。

また,水道管の耐震化工事よりも,神戸空港建設費に予算が使われました。
当時,水道管の大半は継ぎ手部分が弱く,震度6に対応できる耐震管は1970年代に登場したばかりでした。神戸市の場合は,3000キロメートルを超える総入れ替えが必要であり,3000億円超,後の神戸空港建設費に相当する額が必要でした。

大震災直後,極寒の中,水を求めて並ぶ人たちの姿を忘れることができません。断水は長期間き,被災者は,食器を洗うことも,トイレの水を流すこともできず,相当な苦労を強いられたはずです。警告を真摯に受け止めていれば防げた事態かもしれません。


【理由③】 当時の兵庫県知事が,自衛隊への出動要請を行わなかったこと

専門家は,神戸市長田区など火災による犠牲者は1日以上も経過していた例が多く,恐らく,直ちに駐屯地に待機していた自衛隊が重機を持ち込めば1000人は救助できただろうと推定しています。

当時の兵庫県知事(貝塚俊民氏)が自衛隊に出動要請したのは,地震から4時間以上経った午前10時でした。その2時間前の午前8時10分には,逆に自衛隊側からの要請督促があったにもかかわらず,当時の兵庫県知事は,なぜか出動要請を遅らせました。
災害時の自衛隊派遣要請は,被災地の市町村長の求めに応じて知事が行うと決められています。自衛隊は「なぜ出動要請をしないのか。早く出動要請をしてくれ」と,兵庫県知事に督促までしたそうです。
約2万6000人の中部方面隊は,地震発生から43分後の午前6時半には「部隊の全部を行動可能な態勢に置く」という第三種非常勤務態勢に移っていたといいますから,もっと早く出動要請がされていれば…。悔やむに悔やみきれません。


●日頃の心構えが大事

このように,つぶさに理由をみてみますと,甚大な被害は,単に「自然災害」とは言い切れず,むしろ「人災」の側面がクローズアップされてきます。甚大な被害は,決して「想定外」の話ではなかったのです。

中国の南北朝時代から隋にかけての僧侶であり中国天台宗の開祖・智顗(ちぎ,538~597年。天台大師と呼ばれました。)の摩訶止観(まかしかん)第八,それを注釈した中国・唐代の天台宗の僧侶・湛然(たんねん,711~782。妙楽大師と呼ばれました。)の止観輔行伝弘決(ぐけつ)第八には「必ず心の固きに仮(よ)りて神の守り則ち強し」とあります。
日頃の心構えが大事です。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.12.15更新

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こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


 最高裁大法廷は,平成29年11月29日,強制わいせつ罪の成立要件について,性的意図を一律に求めていた47年前の最高裁判例(最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁。以下「昭和45年判例」といいます。)を変更しました。司法試験の受験時代から違和感のあった判例が変更されることとなり,結論は妥当だと思います。ただ,公表されている判決文をよく読みますと,単純に性的意図不要説を採用したとは言い難い表現もあるように思います。
 今回は,判決理由等に言及しつつ,今後の実務への影響を考えてみましょう。


●判例変更に至る経緯

 今回の事案は,被告人が,知人から借金をする条件として,その要求に従い,7歳の被害者女子児童に対し,自宅で自己の陰茎を口にくわえさせるなど,性的虐待を加えたうえで,その状況をスマートフォンで撮影し,知人に送信したというものです(よって,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪(本件では,児童ポルノ製造・提供罪です。)にも問われています。)。
 この点,昭和45年判例では,強制わいせつ罪の成立要件について,行為の性質や内容にかかわらず,犯人の性的意図を要するという一律必要説が妥当であるとされていました(ただし,小法廷のうち3対2という僅差であったようです。)。
 事案は,被害者女性の手引で内妻が逃げたと信じた男が,報復のためにその女性を脅して裸にさせ,写真撮影したというものでしたが,男に性的意図が認められないことから,強制わいせつ罪は成立しないと判断したわけです(もちろん,強要罪は成立し得ます。)。
 他方,昭和45年判例を前提としつつも,その後,これまで今回のような事案と同種のケースが起訴されますと,裁判所は,たとえ被告人が性的意図を否認していたとしても,犯行の内容や状況などから性的意図があったと認定してきました。
 今回の事案でも,当初,検察側はその旨の主張をしていたようです。
 しかし,第一審は,証拠上,被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残ると判断しました。これにより,にわかにざわつき始めるわけです。
 もし必要説に立てば強制わいせつ罪は無罪となる一方,不要説に立てば有罪となります(どちらも児童ポルノ製造・提供罪では有罪となります。)。
 これに対し,第一審,控訴審とも昭和45年判例を否定し,つぎのような明確な不要説に立ち,有罪としたうえで,児童ポルノ製造罪などとあわせ,被告人を懲役3年6月の実刑判決を下しました。
 「強制わいせつ罪の保護法益は,被害者の性的自由と解されるところ,行為者の性的意図の有無によって,被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられない」
 「行為者の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく,同罪の成立にこのような特別の主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しない」
 「客観的にわいせつな行為がなされ,行為者がそのような行為をしていることを認識していれば,同罪が成立する」
 これを受け,判例違反などを理由として弁護側が上告していたところ,最高裁大法廷は47年ぶりの判例変更を行い,上告を棄却したという次第です。


●処罰対象を適切に決することができなくなった昭和45年判例

 その理由として,まず最高裁大法廷は,おおむねつぎのように述べ,昭和45年判例の問題点を指摘しました。
① 強制わいせつ罪が成立するか,法定刑の軽い強要罪等が成立するにとどまるのか,性的意図の有無によって結論を異にすべき理由を明らかにしていない。
② 強姦罪の成立には故意以外の行為者の主観的事情を要しないと一貫して解されてきたこととの整合性に関する説明もない。
 そのうえで,最高裁大法廷は,おおむねつぎのような理由を挙げ,「今日では,強制わいせつ罪の成立要件の解釈をするに当たっては,被害者の受けた性的な被害の有無やその内容,程度にこそ目を向けるべき」とし,47年前の社会情勢などを前提とした昭和45年判例はもはや維持し難いとしました。
① 元来,性的な被害に係る犯罪規定やその解釈は,社会の受け止め方を踏まえなければ,その処罰対象を適切に決することができないという特質がある。
② 昭和45年以降,その時代の各国における性的被害の実態とそれに対する社会の意識の変化に対応し,各国の実情に応じて犯罪規定の改正が行われてきた。
③ わが国でも,性的被害に係る犯罪やその被害の実態に対する社会の一般的な受け止め方の変化を反映し,平成16年の刑法改正で強制わいせつ罪や強姦罪の法定刑を引き上げ,平成29年の刑法改正でも強制性交等罪を新設,法定刑を更に引き上げ,監護者わいせつ罪や監護者性交等罪を新設するなどしている(筆者注:法改正の流れを追ってしまったため,平成29年改正に言及しただけだとは思いますが,行為後の事情で解釈変更されたような印象を与えかねないので,少し表現の配慮が必要であったと思います。)。

 たしかに,もし現時点で被告人が同じ行為に及べば,強制わいせつ罪ではなく,強姦罪改め「強制性交等罪」が成立し,懲役5年以上の重い刑罰が科されます。
 改正により,膣内挿入のみならず,肛門内や口腔内への陰茎挿入も強制性交等罪で処罰されることになったからです。
児童に対する性的虐待を児童ポルノ製造・提供罪で有罪とするにとどめ,強制わいせつ罪について無罪放免とすることは被害の実態からかけ離れていますし,到底許しがたいものです。昭和45年判例を否定してまでも,何とかそれを併せて処罰したいという裁判所の価値判断が強く働いたのかもしれません。


●「わいせつな行為」に当たるか否かの判断

 ただ,最高裁大法廷は,「個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い」とし,つぎのような理由を述べています。

① 刑法176条にいう「わいせつな行為」と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められ,直ちに「わいせつな行為」と評価できるものと,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが「わいせつな行為」として処罰に値すると評価すべきではない。
② いかなる行為に性的な意味があり,処罰に値する行為とみるべきかは,その時代の性的被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄である。
③ 「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ない。


●判例変更による場合分け

 今回の判例変更によって,強制わいせつ罪の成否を検討する際,つぎのような場合分けをすべきいう立場が採用されているといえるでしょう。

(ア) 行為そのものが持つ性的性質が明確で,当然に性的な意味があると認められ,直ちに「わいせつな行為」と評価でき,強制わいせつ罪による処罰に値するケース
→性的意図不要(検討も不要)

(イ) (ア)同様に直ちに「わいせつな行為」と評価できるが,強制わいせつ罪による処罰に値するか否か微妙なケース
 →性的意図の有無を考慮

(ウ) 行為そのものが持つ性的性質が不明確で,行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ性的な意味があるかどうかが評価し難いケース
→性的意図の有無を考慮


●今後の実務への影響

 昭和45年判例で検討された報復目的の事案は,先に触れたように被害女性を裸にさせて写真撮影したというものであり,上記(ア)に当たるといえるでしょう。
 また,少なくとも自己の陰茎を触らせたり,被害者の胸や臀部,陰部を触ったり,キスをしたり,膣内や肛門内に指や異物を挿入したり,裸にして胸や臀部,陰部を露出させるといった場合には,基本的に上記(ア)に当たると評価されると思われます。

 問題は,上記(ア)と上記(イ)との区別となりますが,最高裁大法廷はその判断基準を示していません。結局,ケースバイケースということになるでしょう。
 また,実際に立件・起訴される例としては少ないものの,上記(ウ)に当たるものとしてどのような事案があり得るのかという点も問題となります。
 たとえば,医師による医療的措置は,上記(ウ)の領域で検討され,強制わいせつ罪に当たらないと評価することが考えられます。
 特殊な行為に対して性的興奮を覚える性癖を持つケース,例えば0歳~5歳程度の乳幼児に対する性愛者などについても,上記(ウ)に当たり,性的意図があるということで,強制わいせつ罪として処罰されるということになるかもしれません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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